世界の経営者たちはなぜ「アート」を学ぶのか

「直感力」を磨くことが仕事で重要になる根拠

経営トップだけでなく、企業組織全体にアートの世界の発想を取り入れるには、「アートを教える」「アーティストと連携する」という方法があるが、ほかにもやり方はある。「アーティストを雇う」のだ。

テクノロジー重視の世界ではSTEM(科学・技術・工学・数学)を学んだ学生が求められているという話をよく耳にする。STEMの学位取得者はたいてい「文系」より簡単に仕事を見つけることができ、収入もいい。しかし、現在は多数の職種で自動化が進んでおり、ソフトウエア開発も例外ではない。設計書を基にプログラムを作る作業であるコーディングが自動化されていくと、エンジニアは必要とされなくなっていく。

人々が欲しいと思うモノを生み出す

もちろん今日、企業の根幹を支えているのは、多くの場合、エンジニアやソフトウエア開発者である。私が言いたいのは、彼らが今ほどは必要とはされなくなりそうだということである。それはAI化だけの問題ではない。STEMを学んだ学生の需要が減る理由はほかにもある。

Yコンビネーターは、「起業家は、人々が欲しいと思うものを生み出さなければならない」と説き続けている。何かを生み出すだけでは十分ではないのだ。しかし、これが一筋縄ではいかない。そして、こうした創造には「人間的な要素」がかかわってくる。

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人々が欲しいと思うものを生み出すには、機械ではなく、人間の性質を理解しなければならない。何が私たちをやる気にさせるのか、何が私たちを興奮させるのか、私たちは何を大切にしているのか。

アルゴリズムでこうした感情面を説明するのは難しい。説明するには、「人々のことをよく理解している人々」こそが必要なのだ。

製品やサービスは人々のためのものである。テクノロジーは人のために役立てるものであり、その逆ではない。

そして、人に正しく役立てるには、人文科学やアートの分野から人材を得て、「人の心理」を理解する豊かな能力を発揮してもらわなければならないのである。

(翻訳:小巻靖子)

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