世界の経営者たちはなぜ「アート」を学ぶのか

「直感力」を磨くことが仕事で重要になる根拠

直感力や創造力を重視する右脳型思考が注目されています(写真:Peshkova / iStock)
ビジネスモデルが一夜にして崩れ、新しいライバルが突然現れる今の時代、「データ」や「合理性」だけに頼ることはできません。だからこそ「アート」が持つ直感力や創造力が必要となってきています。世界の起業家や経営者たちはなぜアートを学ぶのか。欧州トップクラスのビジネススクールで教鞭を執るニール・ヒンディ氏の著書『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』の内容を一部抜粋し再構成のうえお届けします。

スタートアップの90%は失敗するといわれている。この数字はどんな起業家にとっても厳しいハードルで、「ビジネスを立ち上げる」ことは難しい。それでも起業するのは、内に秘めた信念・情熱・動機・目的に突き動かされているからだろう。「アートと起業の関係」について研究をしている筆者は、目先の利益にとらわれず、将来に目を向ける多くの人たちを見てきた。

起業家はアーティストと同じように、新たな「意味」と「価値」をつくり出す。人々が見落としていることに目を留め、それを形にするのだ。たとえば、iPhoneが登場するまで、私たちはキーボードがなくても文字を自由に打ち込めることや、自分たちがスマートフォンを必要としていること自体わからなかった。パブロ・ピカソらがキュビスムを提示するまで、私たちは別の描き方、世界の新しいとらえ方があることを知らなかった。

右脳、左脳どちらも働かせることが重要

アーティストのように直感を働かせるというのは、ビジネスの場では普通、推奨されない。わかりやすいように、「右脳型」「左脳型」という考えに当てはめると、起業家は直感的な右脳型思考と、データや論理による左脳型思考のバランスをうまく取っている。一方、ビジネスマンは左脳型思考が重視されてきた。

重要なのは、どちらかを優先させるといったことではなく、両方を働かせて相互作用させることである。ビジネスモデルが突然、時代遅れになってしまう今日、新製品を開発し新サービスを提供するには、創造的な思考が不可欠だ。右脳を助手席に座らせておくだけではいけない。右脳も左脳も運転席がふさわしいのだ。

アートと起業の関係について筆者が最初に調べたのは、テクノロジーの世界だった。この世界のリーダーたちは、アートとつながりを持っていることが多い。アートを手掛けている人、アートからインスピレーションを得る人、アートに囲まれている人などさまざまだ。

最初に紹介したいのは、ポール・グレアム氏である。彼はテクノロジーの世界で今日、多大な影響力を持つ優れたリーダーの1人だ。起業家にしてベンチャーキャピタリスト、そしてエッセイストでもある。

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