世界の経営者たちはなぜ「アート」を学ぶのか

「直感力」を磨くことが仕事で重要になる根拠

エアビーアンドビーは、ご存じのように民泊の仲介サービスだ。2017年11月時点の企業価値は310億ドルに達し、目覚ましい成長を遂げている企業の1つだ。世界190カ国以上で500万室を超える宿を提供している。

同社の設立の経緯は興味深い。共同創業者は3人だが、うち2人は先ほど紹介したポール・グレアム氏と同じく、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインを卒業したデザイナーだ。1人はグラフィックデザインと工業デザインを学び、もう1人は絵画の模写やデザインに関心があり工業デザインを修めた。2009年1月に3人は、グレアム氏率いるYコンビネーターの3カ月にわたるプログラムに招かれ、出資を受けた。

この当時、投資家が求めていたのは、プログラマーやエンジニア、MBAで、デザイナーやアーティストの立ち上げた会社に投資する人など、ほとんどいなかった。グレアム氏もエアビーアンドビーのコンセプトは買っていなかったが、同社の創業者たちに可能性を見いだしたのだ。創造的な素養も備えたグレアム氏だからこそ、一般的なスタートアップのイメージにとらわれずに、先を見通すことができたのだろう。

開発者をアーティストとして扱った

企業とアートの関係を語るうえで、アップルに触れないわけにはいかない。アップルは美しくエレガントなデザインと、革新的な製品でよく知られている。彼らはデザインをアートのレベルにまで高めた。

もちろん、このアップルの芸術的なDNAは、創業者のスティーブ・ジョブズ氏から受け継がれたものだ。ジョブズ氏はアイデア、テクノロジー、そしてアートを結び付けて未来を生み出した。意味と価値を持つものをつくり出すには、テクノロジーを創造性と結び付けるのがいちばんであることを、彼は誰よりもよく理解していたのだろう。

ジョブズ氏はアーティストとして振る舞い、アーティストの気質を持ち、アーティストの影響を受けた。彼のあこがれの人物は大半がクリエーティブな人々で、名声・名誉・仕事を失う危険を冒しながら、人とは違うことをやり遂げて、歴史の流れを変えた人物たちだ。

マッキントッシュ(マック)のデザインが決まったとき、ジョブズ氏は開発チームを招集してセレモニーを行った。その時、彼はチームのメンバーをアーティストとして扱った。「本物のアーティストは作品にサインをする」。そう言って製図用紙とサインペンを取り出し、全員にサインをさせたのだ。初期のマックの本体ケースを開けると、内側にこのサインを見ることができる。

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