「お母さん、それ、家族会議とはちゃうやん〜!」と言う千依さんの声をもろともせず、久美子さんは最所家の子育てポリシーを語ってくれた。
「この子が生まれて、これからはグローバルな世界になるだろうって思ったんです。外国の人ともコミュニケーションをする時に、きちんと自分の言葉で意見を言える人にならないといけないって。
英語などの言語を習得することもそうですが、日本語でちゃんと話ができてこそ、という思いがあった。だから、なるべく自分の思いを言葉で表現できるように、ということに気をつけて育ててきました」(久美子さん)
「ダメ」ではなく「なぜ?」が家族のキーワード
なるほど、それはまさにそのとおりだ。だが2歳の時から? 千依さんは苦笑いをしながら、「確かに、いつどんな時も『なんで?』『どうして?』と聞かれること、それに答えることが、物心ついた時から当たり前の家ではありました」と話を引き継いでくれた。
「たとえば、2歳の私がおやつを食べたいとするじゃないですか。でも親が出してくれたおやつに、『これはやだ』ってなるときもあったんですね、2歳とか3歳とかだと」
「そうしたら『なんで嫌なの?』と聞かれる。それが『ダメ』ということではないんですね。でも『どうして?』とは父からも母からもいつも聞かれていました。2、3歳なんて表現できることは限られていますよね。でも自分なりに『これは昨日も食べたから』とか、何かしら理由を伝える。親を納得させられないと何も通らない、というのがすでに暗黙の了解になっていました」(千依さん)
いわゆるイヤイヤ期の2歳に、論理的な受け答えが毎回期待できるとは思えない。それはご両親も承知のうえだっただろう。だが、最所家は根気強く「なぜ?」「どうして?」を繰り返した。言葉が足りなくても、その思いが伝われば、納得もしてくれた。
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