2歳児から「家族会議」し続けるとどうなるか コミュニケーション能力は高まる?

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「あまりに突然でした。でも、悲しみに浸っている場合じゃないし、しばらくは母を1人にしておけなかった。ドバイを離れ、ちょうど関西ベースで募集があったデルタ航空(現ノースウェスト航空)に転職しました。その1年後に成田に異動になり、6年後にはKLMオランダ航空に再び転職しました」

「父だったらどう言うかな」

人生の転機に、千依さんはいつも家族会議で話をしていた増男さんを思い出すという。

「父ならどう言うかな、と思うとふわっとイメージが湧いてくるんです。それくらい家族会議という場所を通して、父の言葉や考え方をたくさん分けてもらった。寂しくないわけじゃないけど、十分と言えるほどたくさん言葉を交わしたな、とありがたく思うんです。

父の墓が関空から見える場所にあって。関空から飛び立つ時、いつも父が見守ってくれているような、そんな気持ちで仕事をしていましたね」

KLMオランダ航空で活躍していた頃。外国人スタッフからの信頼も厚かった(写真:最所さん提供)

2017年から、千依さんは長く務めたCAの仕事を辞め、独立してフリーランスの講師業の仕事をしている。退職後は主にホスピタリティ業界への就職を希望する人に向けた英会話スクールや、エアラインスクールを開催。1年経った今では、空港関係の企業の採用や人材教育を任されたり、大学でコミュニケーションスキルの講師を引き受けたりもしている。これらはすべて、千依さんの人柄と能力に魅せられた人伝での依頼だ。

「学生や子どもたちと話をしていると、自分がどうありたいかを伝えることへの苦手意識をとても強く感じますね。でも少しずつ話を聞いて、エッセイを書いてもらいながら、自分を表現してもらうと、半年ですごく変わっていくのがわかるんです。講師の仕事などは未経験でしたが、そんな時も、昔、会議で父や母をどうやったら納得させられるかな、どうやったら話を聞いてもらえるかな、と考えて楽しく話したことを思い出しています」

家族会議を通してつむぎ合ってきた「言葉」が、今も千依さんの仕事の軸に、そして生きる力になっている。家族が言葉を交わし続けることの1つの貴重な、子育ての形を魅せてもらえた。

本連載「家族会議のすすめ」では、実際に家族会議を行っている方からの情報・質問・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらにフォームにご記入ください。
玉居子 泰子 編集者、ライター

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たまいこ やすこ / Yasuko Tamaiko

1979年生まれ。東京外国語大学卒業後早川書房に入社。主に翻訳書籍の編集を行う。 2005年にベトナムに移住すると同時にフリーランスに。編集・翻訳・ライター業のほか企業通訳を務める。2007年帰国後もフリーで活動を続ける。テーマは、育児・教育、妊娠・出産、育児の悩み、家族のコミュニケーションなど。主な寄稿先は『AERA』、『東京人』、『クーヨン』、『FRaU』、日経DUAL、JBpress、soar-worldなど。過去の仕事一覧はこちら
 

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