ある時、いじめのニュースが世間をにぎわせていた。このニュースについてどう思う? 千依の学校ではどう? そんな質問が食卓に投げかけられていた。当時、小学校4年生になっていた千依さんは、いつもとは違って言葉がうまく出てこなかった。
「ちょうどその頃、私は学校にいくのが嫌になっていて。いじめられていたということではなかったのですが、友人としっくりこないこともあった。 その時に、父や母が話していたことをすごく覚えているんです」(千依さん)
人と違っていいんだ、私は私と思えた
久美子さんもその会議の会話は覚えている、という。
「確か、お父さんが『ダメなところがあるからいじめられるんじゃない』ということは言ったよね」(久美子さん)
「そう、ダメだから、悪いから、弱いから仲間外れにされるわけじゃないと思うよって。人と違う才能やすばらしい部分があるからこそ、少し群れから外れることはあっても恥じることじゃないって、父親が言ったんですよね 。その意見を聞いて私はなんだかすごく安心したんです。人と違ってもいいんだ。私は私、他人は他人。友だちにうまく溶け込めなくても、悪いことじゃないんだ、と思えるようになりました」(千依さん)
こうした問いに確かな正解があるわけではない。千依さんの悩みに気がついてアドバイスをしたわけでもない。しかしニュースというフィルターを通したからこそ、両親の意見は幼い千依さんの心に染み入り、それが後々の支えになった。
海外でも活躍できる人に育ってほしい、ご両親の当初の思いそのままに、千依さんはコミュニケーション能力だけでなく、英語の勉強にも力を入れていた。そして高校1年生の時にアメリカに1年間の留学をしたいと家族会議で両親に申し出る。だが、この時は2人に大反対を受けたという。
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