2歳児から「家族会議」し続けるとどうなるか コミュニケーション能力は高まる?

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「まず夫が、危険すぎるからダメ、と反対しました。私は最終的には行けばいい経験になると思っていたのですが、『ただ行きたいというのではダメ、きちんと私たちを納得させなさい』と突き放しました」(久美子さん)

「でも私はどうしても行きたかった。ずっと英語を学んできたし、広い世界に出てみたかったんです。危ないと思えるシチュエーションを具体的にして、その対策を伝えるなど、いろんな言い方で父と母に説得を繰り返しました」(千依さん)

あえて第1志望ではない職に就いた

長い家族会議を何度も繰り返し、ようやく千依さんはアメリカ行きの許可を得る。このやりとりによって千依さんは、ただ自分の思いをぶつけるだけでなく、リスクを踏まえて考える能力や、理論の弱点を補う知恵、相手を納得させる交渉力を育む。これが大人になった千依さんに大きな助けとなった。

千依さんはやがて大学を卒業し、外資系の航空会社でキャビンアテンダントの仕事に就く。実はこれは千依さんの第1志望の職業ではなかった。

「子どもの頃から表現する喜びを知っていたから、将来は文章を書くような仕事がしたいと思っていました。でも、大学4年生の時の恩師から、 まずは価値観を広げて固める経験を積んだほうがいいと言われて。ちょうどエミレーツ航空のCA募集がある。向いているかもと薦められて、ひとまず受けてみたんです」

私はCAになりたいわけじゃない。自分にない世界の人の価値観を知りたい。だから受けます。こういう私が必要でないと思われたら、不採用にしてくれて構いません。そう英語で志望動機を語る千依さんを、エミレーツは即採用した。

世界中を飛び回り、さまざまな宗教や職業観を持つ人に出会える仕事は、思いのほか楽しかった。いろいろな文化圏の乗客に対応し、想定外の質問を受ける。ホスピタリティとは何か、短い出会いの中で人と気持ちよくコミュニケーションを取るとはどういうことか。家族会議で鍛えた対話力が発揮され、千依さんは順調に仕事が認められていく。

だが、そんな25歳の時、最愛の父、増男さんが急逝する。

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