モノが売れない!「吉祥寺」に起きている異変 小売業の売り上げが東京平均以下に
「新田開発時には駅の北にある五日市街道を中心に幅約36m、奥行き約1140mの、南北に細長い短冊状に地割が行われ、現在の吉祥寺の繁華街の中心部には月窓寺、光専寺、蓮乗寺、安養寺という4寺が配されていました。その所有地が現在のサンロード付近から東急のある通り・公園通りまでを含んでいるのです」と、20年余りにわたって吉祥寺の歴史を研究している明星学園の高橋珠州彦氏は説明する。
つまり、現在の問題の遠因は江戸時代にあったのである。といっても借地が悪いのではない。ハモニカ横丁が現在まで残ってこられたのは、権利関係が複雑であることに加え、借地所有者が営利第一ではない寺社だったから再開発が行われてこなかったことも理由である。相続税が安くて済む借地だったから残ってきた建物や事業はほかにもある。
大手に気を許したらシャッター街化も
今も寺社が土地価格から乖離した高額の借地料を求めているわけではないはずだ。だが、借地料が家賃をより上げる方向に働いているのも事実だろう。
高額でも店を出す人がいるからと市場原理に任せていると、人気の町の賃料は止めどなく上がり、収支が合わなくなってくる。吉祥寺の場合、そこにファンドや借地という条件が重なり、危機的な状況に陥りつつあるのだ。
「景気がよく、吉祥寺店が多少赤字でもほかの店舗の収益でやっていけている間は大手チェーン店も出てくるでしょうが、いったん何かあった場合には不採算店は切り捨てられる。気を許したらシャッター街化もありうるかもしれません」と山田氏は懸念する。といっても、上がりすぎた賃料を不動産会社がどうこうできるはずはなく、行政も同様。土地の価格に応じて税金を払わざるをえない以上、賃料を下げてくださいとは誰も言えない。
加えてここ数年、吉祥寺の大顧客層である御殿山の購買力が高齢化で著しく落ち続けている。常連客が来られなくなったことで売り上げが大幅減した店もある。相続などで放出された土地にはマンションなどが建てられ、居住人口は増えているが、新たに入居するファミリー層の購買力はかつてのお屋敷族とは比べるべくもない。そもそも、地元で買い物をしない人たちも多く、吉祥寺の顧客は減る一方なのである。
問題を列挙していると気分が重くなる。どこかに問題解決の糸口はないのか。そんなときに有効なのは歴史を振り返ることだと前述の高橋氏は言う。
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