東大卒マジシャンが「人の心を動かす」ワケ 「100%準備」するから臨機応変になれる

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東大卒マジシャンの仕事の流儀とは?(写真:Shota Irieda)
観客を魅了するプロのマジシャンは、ただマジックを見せているのではなく、「相手の心を動かす」技術を駆使していると言います。もしも、そのテクニックが、ビジネストークやプレゼンにも有効だとしたら? 『世界が認めた東大卒マジシャンが教える 不可能を可能にする超仕事術』の著者・入江田翔太氏は、東大在学中にマジックの世界3大大会の1つで優勝を勝ち取った異色の経歴の持ち主。その言葉の中には、ビジネスパーソンに役立つ発想がたくさんあります。

準備したもののうち、8割しか出さない理由

プロのマジシャンは、ショーが始まるまでに100%準備ができています。ツカミから始まり、どうマジックを展開して、最後に「ありがとうございました!」とあいさつするまで、すべて頭の中に入っています。しかし、実際に出力するのは準備していたものの8割、7割程度ということがよくあります。これは、準備段階の失敗を示しているわけではありません。使わなかった2~3割は、「あえて引っ込めた」わけです。

準備し、何度も何度も訓練をすると、それ自体が大切に思えてきて、かえってとらわれてしまうことがあります。しかし忘れてはならないのは、マジックショーの本来の目的が、あくまで観客を喜ばせ、楽しませ、その結果、幸せを生み出すということ。そこで、実際にショーが始まった後の雰囲気の変化や展開上のあや、受け入れられたマジック、そうでもなかったマジックなどを踏まえ、差し引き、出し入れしていくのです。そして、何度も何度も練習し、確認し、シミュレートして100%準備しているからこそ、本番に臨むとき、観客を観察する余裕が生まれます。

違う角度から考えると、現場に臨んだとき、準備したことをそのまま出すのはつまらないな、という感覚を持てれば、ちょうどいい状態にあるのではないかと思います。抜群に反応のよい観客がいるのなら、そこに乗らない手はありません。

時には大胆にショーの構成を変えることもあります。5つ用意していたマジックの3番目に観客がすごく食いついてきたり、その場のキーマンや主役・主賓がよい反応を示したりした場合は、そこから深掘り展開して、4番目を飛ばしたりすることもありうるわけです。マジシャンは、当日準備しているもの以外にもたくさんのマジックを繰り出すことができます。ただし、ショー全体の長さは決まっています。今日のメインとなるマジックを時間内に見せるためには、時間の経過も注意深く見守っていかなければなりません。こうした逆算、入れ替えの感覚を現場でショーを進行しながら運用できることも、100%の準備があってこそ、です。

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