東大卒マジシャンが「人の心を動かす」ワケ 「100%準備」するから臨機応変になれる

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準備してきたからこそうまく省略もできる(写真:Shota Irieda)

このような感覚は、ビジネスにおける打ち合わせやプレゼンの運用にも役立つのではないでしょうか。

あるプレゼンをしている途中、たまたま別の商品やサービスに軽く言及したとします。そこに先方のキーマンや「偉い人」がものすごく食いついてきた場合、予定どおりの説明をするか、ある程度飛ばしたり、簡略化したりして「偉い人」が関心を示したことに対応するべきかの選択は、あまり迷わないでしょう。仮にそのプレゼンに終了時刻が設定されていたとしても、「本日省略した部分は、後日機会を改めて……」と言えばいいだけです。

ただし、準備してきたからこそうまく省略もできるわけです。最低限、プレゼンの締めに必要な時間が10分なのだとしたら、そこを大きく下回らない範囲で食いついてきた部分の厚みを増していくことがその場の判断でできるはずです。

反対に、食いつくであろうことに対して反応が予想外に薄かった場合に、別の手を打てるように準備しているかどうか。それは、プレゼンや営業の成果を大きく分けるはずです。数分の余裕が生まれたときに打てるパンチ、見せられる「マジック」は、ちょうど控え選手のような感覚で準備しておくといいと思います。

「緊張緩和の瞬間」を活用している

マジシャンは、ショーにおいて観客の心を「コントロール(デザイン)」することを目指しています。言い換えれば、観客を自分のペースに引き込むことを実践しています。時間が進むにつれて驚きが増していき、わざと観客の感情を押したり引いたりしながら盛り上げていくような流れをつくります。

【マジックを見せる】→【成功・感動・拍手】→【よりすごいマジックを見せる】→【成功・感動・拍手】→【さらにすごいマジックを見せる】……といった具合に、観客の感情が右肩上がりになるようにデザインしているのです。

この流れをつくるために、マジックが成功して拍手を浴びている瞬間も、「次のこと」を考えています。

お客さんから拍手されているシーンを想像してみてください。マジシャンはそれをありがたく、うれしい瞬間としてかみしめているかというと、実はまったく違います。

マジックが成功する直前は、その時点までで観客が最も緊張しています。そして見事成功すると、張り詰めた緊張が一気に弛緩します。「えっ、なんで?」「全然わからなかった!」「マジシャンってすごいなあ!」……そんな感情を、息をつきながら心の中で処理しているため、観客は緊張感がほぼゼロになります。

実はこのタイミングが、マジシャンにとっては非常に「おいしい」時間帯になります。このとき、次のマジックのタネが仕込み放題になるからです。

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