交通事故削減に「子供の描いた絵」が効くワケ

トラックのボディに絵をラッピングすると?

そこで、「運転席だけでなく、みんなに見られるトラックのボディに、子どもたちの絵をラッピングしてみてはどうだろうか」というアイデアが浮かびました。早速試してみると、試乗したドライバーは、自分の子どもの絵が描かれたトラックなので自然と丁寧な運転になった、と報告してくれました。ラッピングしたトラックを見た周囲の人たちの評判も上々でした。

「見る人に優しい気持ちと笑顔を与え、一方で、絵を描いた子どもたちにも生きる力になっています」と宮田社長。社内に「こどもミュージアムプロジェクト」を立ち上げ、ドライバーの子どもや孫たちが描いた絵をトラックの後部ボディにラッピングする活動が開始されました。

お絵描きをする子どもたちの様子(写真:宮田運輸)

うわさを聞き付け、ほかの運送会社からもぜひこの活動に加わりたい、との要望が相次ぎました。そこで2017年4月から相談窓口として「国際CSV事業部」をスタートさせました。CSVとは運送会社には珍しい名称ですが、Creating Shared Value(共有価値の創造)の頭文字で、企業の利益と社会貢献を両立させようという試みです。子どもたちの絵で、世の中を優しく和ませようという活動を意味します。

協賛企業は、現在、全国で72社。トラック、タンクローリー、商用車など251台がラッピングされて、全国の道路を快走しています。効果は絶大で、子どもの絵が描かれたトラックでは今まで1台も交通事故はないそうです。さらに、建築現場のシート、自販機、工場の壁などにも広がり、いろいろな場所から安全と優しさを発信しています。

「こどもミュージアムプロジェクト協会」を設立

プロジェクト発足時の思いを受け継いで、さまざまな運動も展開しています。

会社スタッフが幼稚園、学校を訪問し、プロジェクトの趣旨を伝えて、お絵描きした作品をマグネットシールやキーホルダーに加工してプレゼントしています。

また2017年末には宮田社長が中国北京、無錫の盛和塾でこの運動を発表し、大きな反響を呼びました。中国、韓国から見学に訪れる人も増えてきました。まずはアジアからこの運動が広がればいいな、と考えています。

今年4月には、「こどもミュージアムプロジェクト協会」も設立しました。全国規模で同業者の参加を呼びかけていく予定です。このほか、プロジェクトのドキュメンタリー映画も製作中で、早ければ来年にも公開予定です。すべて、交通事故撲滅と優しい社会実現のための活動です。

こうした活動を長く支えるもの、それは「人」だと宮田社長は言います。「私や弊社がいちばん大事にしているのは、『人』です。『人』と幸せを分かち合いたいと考えています」

この考えのもとに開催される社内会議がユニークです。

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