「お祈り」も「サイレント」も、過去3年を振り返ると常に1位、2位に位置していた言葉だが、1つとはいえ、順位が下がってしまったのには、やはり売り手市場という背景がありそうだ。内定を獲得しやすくなったことで、選考に落ちるケースが減少、少なくとも就活生の心理的な負担が軽減されているということではないだろうか。
そんな就活生優位の環境は、ランク外にはなるが、「逆お祈り」という言葉の登場に象徴される。これは、企業から学生への「お祈り」とは逆に、学生から企業に対して選考辞退の連絡をすること。売り手市場で複数社から内々定をもらうことが特別なことではなくなってきたという環境が背景にありそうだ。
ググる(グーグルで検索する)や、ディスる(悪口を言う)といったネット用語は、すでに日常用語化してしまったが、インターネット時代、SNS時代を象徴する就活用語もある。たとえば「オワハラ」と同率で5位に入った「NNT」。これは「無い内定」の略で、内定がないことを“内々定“にかけて表現している。
短縮形のネット用語はたくさんあるが、それと同じようにSNSでの発信や掲示板への書き込みで、スピーディに表現するために誕生したのではないだろうか。記号化することで、その言葉が持つマイナスイメージも払拭できる、というメリットもありそうだ。ちなみに、「NNT」の反意語として、「ANT」(有る内定)という言葉も誕生している。
また “神”を使った言葉も就活用語に登場してきた。若者を中心に、尋常でなくすごいことを“神がかっている”と表現したり、行き届いた対応のことを“神対応”といったりするが、就活用語ではランク外ではあるが、「神に近づく」という言葉も誕生している。
「リクラブ」でリクルート中に恋愛モード
この言葉は、何社も企業の選考に落ち続けて、“神様のようにお祈りされる機会が増える”ことを意味している。またアイドル文化の影響なのか、「握手会」という言葉も登場している。これは、6月以前に内々定をもらって、それを受諾することを事前に合意(握手をする)し、6月1日の選考解禁後に正式に内々定をもらうことを意味する。
さらにそこから派生し、「就活アイドルに、オレはなる!」という言葉も登場。これは握手会(内定)の権利を手に入れたいという願望や、企業から握手を求められるよう人気者になりたいという思いが表現されているようだ。このように、アイドルとのコミュニケーションの場として身近になった握手会を、就活のシーンでも引用しているのは、今の時代を反映していて面白い。
他にも、「なるほど! うまい!」と感心させられる表現がたくさんある。トップ10内では9位の「終活」。これはもちろん、“自分らしい人生の終わりを迎える”、という意味の終活をもじったもの。就活用語としては、入社予定先以外の企業に内定辞退の連絡を入れて、就活を終えるために活動することだ。
10位の「リクラブ」はリルートラブの略で、就活を通して出会った学生同士で恋愛に発展すること。説明会や面接で出会った就活生同士が、意気投合して仲良くなるのは、案外珍しくないという。同じ業界や企業を目指し、さまざまな不安を抱えながらともにがんばる仲間だからこそ、共有できるものも多いのだろう。
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