サヘル・ローズ「偽善者と言われたっていい」 同志たちと社会を変える活動を続けたい
山田:そうしたコメントを書く人は、当人とはまったく無関係の第三者ですよね。ネットでは自分とは無関係な人をバッサリ斬ることでストレスを発散する人がたくさんいるんです。面と向かっては言えないけれども、「いかがなものか」とさも正義のように振る舞う人は多い。でも、それにいちいち怒っていたら神経がすり減るでしょう。
サヘル:そうなんです。でも、そうした偏った意見を発信する人たちを無視するのではなく、向き合いたいという思いがあるんです。「そんな偏った考え方を発信するのはやめませんか」って伝えたい。
報道の不自然さに怖さを感じる
山田:報道という点では、難民問題、LGBT問題などは幅広く扱われるようにはなっていると思います。東洋経済オンラインでも、両方とも力を入れて報じています。
サヘル:急に難民を取り扱う報道が増えてきたように思うんです。LGBTも急にメディアが取り上げるようになった。ちょっと不自然すぎるので、怖さを感じるんです。
2020年のオリンピックに向けて、「日本はオープンになりましたよ」とアピールしようとしているだけでは?と疑ってしまう。もし、そうだとしたらオリンピックが終わったあと、どうなるかが心配。そこに危機感を覚えます。
山田:議論の輪が広がると、いろいろな人が集まってきます。多くの人がLGBT問題や難民問題に関心を持てば、いろいろな考えの違いが見えてくる。反目し合うことはなく、冷静に議論できるといいですよね。
サヘル:議論をできるといいのですが、教育が追いついていないように思うんです。学校の授業で難民問題を取り扱うことはほとんどない。LGBTのような性性に関する議論がなかなかされにくい時期があったと思います。だから、多くの若い人たちは問題に直面したときの対処法を知らない。流されているだけの人が多い。流しそうめんじゃないけれども、すーっと流されてしまう。
山田:学校ではどのような教育が必要だと思いますか。
サヘル:「人の痛み」がわかるような教育です。有名人だからたたいていいとか、そんなおかしな考えを持ってほしくない。有名人だって生身の人間です。
私自身、よくたたかれます。それでもなぜツイッターとかインターネットをやめずにいるかというと、わたしはネガティブになりたくないんです。わたしは、自分とかかわった人、自分と触れた人を変えてみせたいんです。人を傷つけている人もどこかで傷ついている人なのだと思います。そういう方々を全員変えることができなかったとしても、何人かでも変えられれば、と。
おそらく母性が強いんだと思います。自分がその人を包んであげて、癒やしたい。それが偽善って言われても構いません。結局、誰かが偽善者とののしられなければ、この社会を変えることなんてできない。だから、私は偽善者で結構です。
山田:いや、偽善者ではないですよね。
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