民主主義を壊す「コスパ第一主義」という病 日本は「奴隷天国」化している
大人を子どものままでいさせればいい
白井 聡(以下、白井):消費社会の問題、人間の消費者化の問題について話し合いたいと思います。教育問題も民主主義の問題も、困難の源は、結局ここにあると感じるからです。
米国の政治学者ベンジャミン・バーバーに、『消費が社会を滅ぼす?!――幼稚化する人びとと市民の運命』(吉田書店)という著書があります。「消費社会化で人々が幼稚化しているという現実があるけれども、それは資本家側が意図的にそうし向けているのだ」という内容です。
内田 樹(以下、内田):消費者はマーケットによって意図的に幼稚にさせられているというのは、そのとおりですね。
白井:この本は副題が「幼稚化する人びとと市民の運命」となっています。テレビCMを見て、すぐに影響を受けて消費する層は子どもや若者ですが、人口の高齢化が進むと、その効果が落ちてしまう。だったら、高齢者を含めて全部の大人を子どものままでいさせればいい。資本の側はそういう発想になるわけです。バーバーはそこで、「人々が幼稚化した場合に、果たしてデモクラシーに未来はあるのか」という問題提起をしています。