サヘル・ローズ「偽善者と言われたっていい」 同志たちと社会を変える活動を続けたい

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山田:ただ悩ましいのは、難民問題ひとつとっても考え方は大きく割れます。日本での難民の申請件数はこの3年で急増しているのに、認められる数は非常に少ない。このことを問題視して要件の緩和を進めよ、と主張することはできますが、一方で世界的に見ても難民受け入れを抑制する動きが強まっており、治安のことも考えて緩和は不要との考えも強い。

サヘル:もっと根っこの部分を報じてほしい。彼らがどうして難民になったのか。一人ひとりの事情があります。その説明なしに、「難民の受け入れを増やせば犯罪が起きてしまう」「偽装難民が増えている」と報じるのはバイアスが掛かっていると思います。

メディアの報道の仕方には大きな問題があります。悪いことばかりセンセーショナルに報道しすぎです。人の揚げ足ばっかり取って、誰かを標的にして足蹴にする。誰か1人をここに置いて、その人にすべての矛先が向かうように集中的に報じるのは、本当におかしいと思います。

まるで、いじめです。スポーツ界で起きている内部の混乱にしても、芸能人のプライベートな交際相手とのインスタ写真にしても。なぜそうやってネガティブなことばっかり言ってたたくんだろうって悲しくなります。すべてのスタートがネガティブ発信なんです。で、それをネットを見ている人たちも面白がっている。

そして何も裏も取らないで拡散させていってしまう。自分たちで調べようとしないまま、流れてきたものをリツイートして拡散する。これって結局、小学校、中学校で起きるいじめと変わらないですよね。

山田:そうはならないように気をつけているつもりですが。

誰かがいじめをやめようよ、と発信し続けなければダメ

サヘル:私から見たら、大人のいじめです。今ネット社会はそういうものがうごめいていて。だから、傷ついた人はネットを見なくなる。シャットダウンしてしまう。私もシャットダウンしてしまいたくなるときがあります。でも、それじゃ変わらない。誰かがいじめをやめようよ、と発信し続けなければダメだと思っているんです。

山田:ネットにはいろいろな人がいます。「気にしないでスルーしよう」という意識を持つことも必要ですね。

サヘル:インターネットを通じて世界中の情報を知ることができるし、世界中の人々とつながることもできる。ですからネットはすばらしいものです。世界にはSNSでつながることによって革命を起こした国もあります。それと比べると、いじめのような使い方が目立つのは、日本が平和である証拠かもしれない。平和になればなるほど人を思いやる気持ちが薄まってきてしまったりするのかもしれません。

このあいだの、広島の豪雨でショックだったのがボランティアをした人へのバッシングです。SNSで発信をせずに行ったAさんに対しては「何も言わずに行った、なんて男前なんだ、カッコいい」という評価。でもSNSで発信をしたBさんに対しては「いかにもいい人を演じていてカッコワルイ」と。でも、それをわざわざ書く理由はあるの? 「なぜある人がよくて、ある人が悪い」って評価をする必要があるのでしょうか。そんなことで白黒をつけたがる意味がわからない。

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