医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法 キップを手に入れる最大難関の負荷が重い

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関西地方のある私立大の学長は「ただ医学部に入りたい、親に言われて何となくという子を入試でどう確認するか。(東京医科大のような)『差別』はしていないが、(受験者の適性や熱意をみる)『評価』はしている」と話す。

ストレート卒業率という指標がある。6年間の修業年限でどれだけの学生が卒業したか、という割合だ。上位は100%近く、下位は60%を切る。2017年度のワーストは帝京大学の57.9%だ(ランキング詳細は『週刊東洋経済』9月3日発売号で紹介)。この数値が低い大学は、留年や退学、転部した学生が多いことを示している。

留年や退学、転部する医学生もいる(写真:Shoko Shimabukuro/iStock)

一見、留年や退学が多い大学は問題があるように思える。とくに、国家試験合格率を上げるために、学力の低い学生を卒業させず、国家試験を受けさせない操作が行われている、とされるだけに尚更だ。

だが、「全員を卒業させればいいものでもない。その分学生は勉強しなくなる」(前出の学長)。ストレート卒業率の低い大学は、医師になるべきではなく、医師にならないほうが良い学生を6年間の教育の過程で、適切にフィルタリングしていると見ることもできる。

ストレート卒業率100%はもちろん望ましいが、確率的にドロップアウトする学生が一定数出るのは仕方ないだろう。「進級のハードルをあげれば留年者が増え、緩めれば後で国家試験に響く」(中堅私大幹部)。ストレート卒業率をとるか、国家試験合格率をとるか。そのさじ加減が難しい。

医学部は「潰し」のきかない学部

医学部はいわば、医師になるという一本道しかない「職業訓練校」だ。医学部に合格しても、医師国家試験に合格しなければ「ただの人」。他の学部と違い、いったん入学すれば、医師を目指して突っ走るしかない、「潰し」の効かない学部だと言える。

何十倍もの志願倍率の医学部入試をくぐり抜けた後も、医学部の6年間は勉強漬けの毎日だ。卒業試験と国家試験の難関をクリアしたかと思うと、卒業後には研修が待ちかまえ、医師としてのスタートラインに立つのは早くて30歳近くになってから。

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