医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法 キップを手に入れる最大難関の負荷が重い
医師1人を養成するのには1億円かかると言われ、高額な学費だけではその費用をまかなえず、税金が投入されている。臨床実習も「大学病院のベッド数だけでは足りず、忙しい医療現場を抱える地域の基幹病院に協力いただいて、何とか回している。地域が総力あげて医学生を育てていると言っても過言ではない」(地方の国立大学教授)。
だから、医学部入学定員も国家試験の合格者数も、まるで社会主義国家のように国が管理することも正当化される。もし医師としての適性や意欲がない受験秀才がこの厳しい道に迷い込んだのなら、早いうちに方向転換したほうが、本人にとっても、社会にとっても幸せなことだろう。
不幸なミスマッチを少しでも減らすために
国語を課して論理性をみたり、東京大のように面接を復活させたり。限界があると知りつつ、各大学が入試方法の試行錯誤を続けているのも、こうした不幸なミスマッチの確率を選考段階で少しでも減らすためだ。
東京医科大事件は、医学部入試のあり方に改めて世間の関心を向けさせた。もちろん、女性受験者の点数を加工するような差別は論外だが、長い医師キャリアを、医学部入試というただ一点だけで評価するのはいかにもバランスが悪い。医学部入試の合格率20~30%に対し、医学部国家試験の合格率は90%近い。入るのは難しいが、いったん入ればほぼ確実に医師のライセンスを受け取れる。そして、医道審議会の医師処分の甘さが指摘されるように、いったん医師になれば、よほどのことがない限り、医師免許を取り消されることはない。
医学部入試にかかる負荷の重さが、東京医科大事件の遠因となったように思える。
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