マケイン氏が議会で圧倒的人気を誇ったワケ ハグするために議員たちが行列を作っていた

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2008年11月4日、バラク・オバマ氏と争った大統領選挙でのジョン・マケイン氏。2018年8月25日、81年の生涯を閉じた(写真:REUTERS/Brian Snyder)
アメリカ国民からその存在を最も愛された政治家のひとり、アリゾナ州代表の上院議員、ジョン・マケイン氏が8月25日、脳腫瘍により81年の生涯を閉じた。同じ共和党でありながら、現在のドナルド・トランプ大統領の政治姿勢を痛烈に批判するなど、マケイン氏はつい最近まで最前線で影響力を持った大物政治家だった。
しかし、そうした記事は数多くある追悼記事を参考にしてほしい。本稿では筆者がワシントンのアメリカ議会を取材する中で生で見た2005年から2008年にかけてのマケイン氏の素顔について書き記し、哀悼の意を表したい。

「あ、ほら、マーヴェリックが来たよ!」

時は2005年のワシントンDC。アメリカ議会上院のフロアが見渡せる記者席で、隣にいた記者が、議場を指さすとそう言った。その指の先を見ると、すでに20人ほどの人だかりができていた。

「マーヴェリック」と言えば、映画『トップガン』でトム・クルーズ演じる海軍のパイロットが、仲間からそう呼ばれていたあだ名だ。「一匹狼」または「異端者」という意味だ。

その同じ呼び名で知られるアリゾナ州のベテラン上院議員、ジョン・マケイン氏が、自身が立案した法律の投票のために、採決のフロアに登場したのだった。だが肝心のマケイン氏の姿は、その白髪頭のてっぺんしか見えなかった。すでに数十人の大柄な男性議員たちがマケイン氏を取り囲み、彼の小柄な身体を我先にハグしていたからだ。

圧倒的な人気

まるで人気プロフットボール選手のように、次から次へと男性議員たちからハグされ、もみくちゃになっているマケイン氏。さらにその人だかりの横には十数人の議員たちが列をつくって彼とハグをする順番を今か今かと待っていた。

そして、その光景のすべてがC−SPANというケーブル局を通じて、全米に報道されていた。

何なんだ、この圧倒的な人気は……。それが筆者が初めてマケイン氏を見た時の驚きだった。

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