マケイン氏が議会で圧倒的人気を誇ったワケ ハグするために議員たちが行列を作っていた
オバマ氏が持論を発言すると、議員たちの顔が白けたのがはっきりわかった。「この若造、家族にPTSDの後遺症を抱える人間もいない、自ら軍経験もない、さらに議員としての経験も浅いのに、何、きれい事を言ってるんだ?」という空気がその場に蔓延した。
さらに、休憩時間になると、オバマ氏はそこにいた私たち記者や議会職員に向かってこう尋ねたのだ。「えーと、お手洗いはどこだっけ?」
「そこの角を曲がったところですよ、セネター」と職員が答えた。「あ、そうだったね。ありがとう」とオバマ氏が言って部屋を出ると、室内に衝撃が走った。「あの新人、自分が所属する委員会室のトイレの場所もまだ覚えていないのかよ」という声が室内からぼそぼそと聞こえた。
シカゴの街での彼の輝かしいスターぶりを見慣れてきた筆者にとって、ワシントンの議会内でのオバマ氏の存在感のなさを目撃するのは、かなり衝撃的な出来事だった。
圧倒的な存在感の違い
マケイン氏とオバマ氏のアメリカ議会での圧倒的な存在感の違いーー。それは上院に提出された重要な財政法案に、各議員がイエスかノーかを投票する時に最も露呈した。
マケイン氏がフロアに登場すると、拍手さえ起き、両党の議員たちが一斉に彼の周りを取りまくのだ。瞬く間に彼の前にハグの列ができ、マケイン氏はなかなか投票する場所までたどり着けない。
アメリカの上院議員たちは、その多くが「プロフェッショナル・フレンド」と呼ばれるほど、人との関係を作るのに長けている。全員が基本、人たらしであり、そうでなければ、スピーチ文化のアメリカで政治家になることはまずできない。
そんな彼らは、大きな法案の決議の場が多くのメディアに注目されていることを当然知っている。議員同士のハグは、パフォーマンスであり、縄張りの強化が目的だ。マケイン氏とハグすることで「こんな大物政治家と通じてるぞ。自分には法案を通せるパワーがあるぞ」と地元有権者たちに見せるショーでもあるのだ。
当時、テキサス州代表の共和党下院議員で、下院議長を務めていたトム・ディレイ氏が選挙法違反と汚職の疑いで逮捕された。ニコニコと満面の笑顔で撮影されたディレイ氏の異様な「マグショット」(逮捕写真)が出回ってからすぐ、彼は議会に戻ってきた。
「ハンマー(金槌)」とあだ名されるディレイ氏が向かった先は、マケイン氏がハグされまくっている上院だった。
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