マケイン氏が議会で圧倒的人気を誇ったワケ ハグするために議員たちが行列を作っていた
当時、筆者はシカゴにある大学院に学生として籍を置きつつ、ワシントンで、中西部ミズーリ州の新聞社のワシントン特派員として、アメリカ議会を取材して記事を書いていた。
初めて議会の記者証をもらい、「キャピタル」と呼ばれる白いソフトクリームのような形をした議事堂の建物の中に入ると、まず頭に叩き込んだのは、議事堂内の詳しい地図だった。
迷路のように複雑に入り組んだ議事堂の建物の構造を把握し、上院と下院をいかに早く往復できるかが、締め切りのある記者にとっては死活問題だからだ。アメリカ議会の建物の地下にはなんと独自の地下鉄も走っており、そのおもちゃの電車のような地下鉄を上手く使うと、効率的に回れることも知った。
議員たちを取材するには2通りのやり方がある。議員のオフィスに取材申し込みをし、広報のフィルターを通した正式なコメントを待つか、政治家から直接談話を取る「ぶら下がり取材」をするかだ。
議員を追いかける記者たち
もちろん後者の方が、広報のフィルターを通さない分、議員の生の声を直接聞ける。そのため、何十人もの記者が上院議員たちを一斉に追いかける。「chasing the senators」(いま上院議員を追いかけてます!)」と記者たちがエディターに携帯電話で伝えながらダッシュする。
走りやすい靴を履いて議員たちを追いかけるのは基本中の基本だが、知り合いのAP通信社の男性記者は、男性上院議員をトイレの中まで追いかける猛追ぶりで有名だった。だが、最大の関所はエレベーターだ。議員用のエレベーターと一般用のエレベーターが別々に隣り合って設置されているのだ。
議員専用のエレベーターにさっと乗り込まれてしまっては、記者はそれ以上追いかけることができない。警備員の目が光っている。「ああ、またエレベーターで逃げられちゃったよ」。そんな仲間の記者の嘆きを聞くこともしばしばだった。
ある日のこと、共和党のマケイン氏と、民主党の有力者であるマサチューセッツ州代表のテッド・ケネディ上院議員が共同で立案した移民法改案が発表になった。
共和党と民主党という日頃対立する党の有力議員同士が手を組み、移民法改正に乗り出したわけで、大ニュースだった。
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