「武豊とオジュウ」が福島競馬場に残した軌跡 豪華共演で見せた圧勝劇は次の100年の布石

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昨年の中山大障害でのアップトゥデイトとの死闘はベストレースとも言われた。今年の中山グランドジャンプも大楽勝。

直線に「置き障害」がある中山グランドジャンプで4250mを走り抜いて昨年が上がり3F(ハロン・最後の600mを指す)36秒5、今年が3F36秒9の末脚を繰り出し、ラスト1Fは11秒台。ネットの掲示板では「オジュウチョウサンは平地の長距離重賞でも通用する」という評価がどんどん膨らんでいった。

オジュウチョウサンを所有する長山尚義オーナーも夢を抱いていた。昨年の有馬記念では出走資格がないにもかかわらずファン投票で1278票を集めて77位となった。

「障害では敵なしの強さ。あの馬の可能性を平地でも試したいと思った。大勢のファンが応援してくれているし有馬記念に出してみたいと考えた」。今年の宝塚記念では4268票で43位。登録馬の中では9位に相当した。登録していれば立派なファン選出馬になれたわけだ。

しかし、それができなかった。オジュウチョウサンは平地で未勝利。古馬(4歳以上の競走馬)の平地重賞に平地での未勝利馬は出走できない規定がある。平地競走を勝たなければ重賞には出走できない。

有馬記念や宝塚記念のようにファン投票による優先出走権があるレースは特別登録した馬のうちファン投票上位10頭に優先出走権が与えられる。そのためには平地競走での1勝が必要だ。4歳以上の平地未勝利馬は東京・中山・京都・阪神の4大場には出走できないというルールもある。

得意の長距離戦を狙った作戦

平地未勝利馬が出走可能なのは500万下でも少頭数になりやすい長距離戦。そこで福島競馬場で行われる2600m芝の開成山特別が候補に挙がった。例年10頭前後でフルゲートになることはほとんどない。距離の長い障害レースで強い競馬を見せてきただけに長距離戦を狙うのは当然と言える作戦だった。

過去、障害と平地の両方の重賞を勝った馬は11頭。いずれも平地で実績を残した後で障害に転向したケースだ。障害を経験した平地GⅠ馬は5頭。このうち4頭は平地GⅠを制してから障害に転向した。

平地から障害に転じて再び平地に戻ってGⅠを勝ったのがメジロパーマーだ。1991年の札幌記念を勝ったが、京都大賞典7着後に障害に転向して2戦1勝2着1回。

しかし、障害技術が一息という理由で平地に戻ると、1992年に宝塚記念・有馬記念の春秋グランプリGⅠ連勝を達成した。1993年エリザベス女王杯を制したホクトベガは1994年に障害転向を考えて障害練習を行った。結果的にプランは立ち消えになり障害には出走せず、後に砂の女王と呼ばれる活躍を見せた。とはいえ、障害のJGⅠ馬が平地競走に戻って勝ったというケースはなかった。

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