「武豊とオジュウ」が福島競馬場に残した軌跡 豪華共演で見せた圧勝劇は次の100年の布石

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7月7日の福島競馬場は熱狂に包まれた。JR福島駅のタクシー乗り場は朝から長蛇の列。開門時には2658人(昨年は1667人)が並んだ。福島競馬場の駐車場は午前10時43分には満車になった(昨年は満車にならず)。指定席は午前8時20分に満席。いずれも土曜日としては異例の混雑だった。

場内にはオジュウチョウサングッズの特設ワゴン販売があったが、売り場は最大で500人が100mの行列をつくった。売り上げは500万円。通常のターフィーショップでも500万円の売り上げがあり、グッズは飛ぶように売れた。

開成山特別の売得金は11億4320万1100円で昨年(5億8458万2500円)の約2倍。福島の土曜日の9Rとしては破格の売り上げだった。オジュウチョウサンは単勝2倍。もちろん断然の1番人気だった。

まるでGⅠレースのような雰囲気に包まれた

パドックではオジュウチョウサンと武豊騎手をひと目見ようとするファンで埋まった。

パドックでの武豊騎手(写真:筆者提供)

異様とも言える熱気だった。パドックでも返し馬でも「頑張れ」と声援が飛ぶ。

空調が完備されたスタンドから大勢のファンがスタンド前に出てきてゴール前やウイナーズサークルの周辺に押し寄せた。

こんな光景は重賞レースでもなかなか見られない。少なくとも東日本大震災後でこれほどゴール前に立錐の余地がないぐらいファンがいたことはなかった。

福島競馬場でGⅠが行われたことは一度もない。それでもGⅠのような雰囲気があったことは確かだった。

注目のスタート。武豊騎手とオジュウチョウサンは抜群のスタートを決めると周囲の馬に行かせて外目の4番手に付けて流れに乗った。1F12秒台でペースは淡々と流れた。1周目のホームストレッチでファンから有馬記念を思わせるような大きな拍手が巻き起こった。

オジュウチョウサンと武豊騎手は終始抜群の手応え。2周目の4コーナーで逃げ馬が失速すると一気に先頭に立った。ここで場内は大きな拍手に包まれた。直線。最内で先頭に立つオジュウチョウサンと武豊騎手を地鳴りがするかのような歓声とともに拍手が後押しした。後続との差を一完歩ごとに開く。最後は3馬身差の圧勝。直線半ばからゴールを駆け抜けた時の歓声の大きさは大げさではなくGⅠ並みだった。

これほど福島競馬場が沸いたのは東日本大震災後では初めてだった。オジュウチョウサンの期待以上の強さにファンのボルテージは最高潮に達した。引き上げて来た武豊騎手は鞍上で手を上げて声援に応えた。ファンが熱狂する姿を見て実にうれしそうに笑った。

ウイナーズサークルでの表彰式にオジュウチョウサンと武豊騎手の姿をひと目見ようとファンは群がった。そこには笑顔があふれていた。

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