誰も知らなかった「天草エアライン」の凄み

「島のエアライン」を書いた黒木亮氏に聞く

──執筆に3年かかっています。

3年前の夏に天草、熊本に行き、書かせてほしいといきなりあいさつした。先方は誰もがびっくりしていたが、宣伝になるかもと判断し、受諾してくれた。その後も、どんな内容になるかわからない段階でもきちんと組織対応してくれた。

──空港立ち上げからドラマに満ちています。

実はある人が、空港立ち上げまでの2年と立ち上げ後1年の業務日誌を貸してくれた。それには関係者の私事まで詳しく書いてあった。たとえば華やかに見えるCA(客室乗務員)の動静。開業前の実証試験飛行でCAが全員(当時3人)泣いたとか、脱出訓練の様子など迫真性に満ちていた。CAは室内の清掃まで自分でやらなければならない。「田舎CAかな」と軽く見ていたが、むしろ大手よりも頑張っているようだった。

リアルに描かないと、迫力が出ない

──迫真性は操縦シーンにも。

黒木 亮(くろき りょう)/1957年生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。銀行、証券会社、商社に23年余り勤務し、国際協調融資などの業務を手掛ける。2000年作家デビュー。『巨大投資銀行』『法服の王国』をはじめ、作品は100を超える(撮影:梅谷秀司)

リアルに描かないと、迫力が出ない。政府専用機の元パイロットが天草エアラインの操縦桿(かん)を握っていて、直に説明を受けたが、オート三輪と同じとたやすく言う。

実際の機長の話に加えて、ユーチューブやDVDでシミュレーターを見て学び、航空会社のマニュアルを丹念に読んだりもした。よかったのは整備士に操縦手順を懇切に教えてもらえたこと。親しくなった機長の携帯にもよく電話して、細かいことでも教えを請うた。

──プロペラ機とジェット機ではかなり違う?

当初ボーイング737のDVDで勉強して、それをベースに執筆していたら、プロペラ機とは大いに違うものだった。実は今回の単行本化に当たって関連部分を全部チェックして書き直した。

小説の最後に出てくる、機体のリース先のノルウェー・フライバイキング航空に取材に行ったときに、そこの機長がコックピットに乗っていいと、4区間乗せてくれ、操縦の仕方をすべて見せてくれた。それも描写に大いに役立った。

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