誰も知らなかった「天草エアライン」の凄み

「島のエアライン」を書いた黒木亮氏に聞く

第三セクターの小さな航空会社の苦難と挑戦を描いた、異色の「実名物語」となった今作の裏側とは?(写真:shin / PIXTA)
人口15万人の島が85億円の空港を建設し、自前の40人乗り双発機1機で空路を支える。『島のエアライン』を書いた作家黒木亮氏に聞いた。

形式は小説だが中身はノンフィクション

──異色の実名ノンフィクションです。

形式は小説だが、中身はノンフィクション。しかも、ほとんどの登場人物が現役で活躍中だから、事実を外すことはできない。実名で説得力を持たせた。九州の人はおおらかで、うるさいことを言われなかった。3カ所での別々の会話を1つにまとめるようなことはしたが、それも極力少なくした。基本的に事実に即している。週刊誌での連載が先行していて、間違っているところがあれば知らせてほしいとメールを送ってはいたが。

熊本弁と天草弁を織り交ぜてあり、熊本言葉がいま一つうまくいっていなかった。最終段階でそれぞれの地元の人に不自然さがあれば指摘してほしいとメールし、納得できる感じに直せた。方言がないとローカル色が出ないので、これにはこだわった。僕の過去の作品は、どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションかわからないとの感想が寄せられることがあった。一種の苦情だが、その疑問を今回は解消できた。

──主要舞台は天草、熊本。

双発機1機が地域の生活、医療、観光を支える、第三セクターの小さな航空会社の苦難と挑戦の「実名物語」になった。

──なぜこの地域に着眼?

前作の『法服の王国』の取材で天草へ行った。2011年のことだ。今回の主役の天草エアラインに搭乗して福岡と天草を往復した。すぐそばに雲仙岳のどでかい姿が見えて、遊覧飛行のようだった。空港では年齢や身長がバラバラの職員が機内案内や荷物の受け渡し、何でもやる。市役所の航空会社かと思ったら、1日10便も飛んでいる。同じ機体1機で。この頃から、これは物語があるぞ、調べてみようと思っていた。

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