JAL新社長に直撃、LCCで「B787」を飛ばす理由 整備一筋30年、赤坂社長が語る航空機の真髄

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今年4月に就任したばかりの日本航空(JAL)の赤坂祐二社長。整備畑を長く歩んできたからこその知見が言葉の端々ににじんでいた(撮影:尾形文繁)
今年5月、中長距離路線を運航するLCC(格安航空会社)に参入することを発表した日本航空(JAL)。4月に就任した赤坂祐二社長にとっては、初めての戦略発表となった。2020年に成田空港を拠点として、ボーイング「787」型機2機で事業を始める。アジアだけでなく、欧米にも路線を伸ばす計画だ。
今世界中でLCCを中心とした業界の動きが激しい。JALのLCC参入は業界で最後発といえるが、勝算はどこにあるのか。赤坂社長に直撃すると、長年整備の現場で積んできたベテランならではの答えが返ってきた。

5年前だったらLCCには「NO」だった

――昨年発表した2020年までの中期経営計画では、自社でLCC事業を行うことには一切触れられていませんでした。なぜ今、中長距離LCC参入の表明に至ったのでしょうか。

参入の議論自体は、もう随分前からあった。決断を延ばしてきたわけではなく、LCCのいろいろな可能性や収益性を最後まで見極めたかった。運航機材として用いるB787の安定性もしっかり確認する必要があった。

整備本部長だった立場から言えば、(国内LCCが出始めた)5年前にこの話が出ていたら、僕は「NO」を突き付けたと思う。中長距離を運航できるのは787しかないと思っているが、バッテリーに起因する電気系統の問題など、機材としての品質が安定していなかった。当時、これを非常に稼働率の高いLCCに使う決断をするのは難しかっただろう。

そこからボーイングとも技術的な議論や改善をしながら、いろいろな改修をやってきた。本当に血のにじむような努力をして、本来787の持つ非常に高い性能が十分発揮できるようになった。このことが今回の決断に至った大きな要素の1つだといえる。

――2010年に経営破綻した際の公的資金による支援が、ANAとの競争をゆがめたとして、国土交通省がJALの新規投資や路線開設を制限する、通称「8.10ペーパー」が昨年3月末に期限を迎えました。このことも戦略を後押ししたのでしょうか。

8.10があったから、というわけではない。確かにペーパーは意識していたが、この話はまったく別。LCC新会社が拠点とする成田空港の発着枠が増える2020年の就航を狙うという事実があり、そこを目指して検討してきた。ギリギリのタイミングだったと思う。

787の話はもちろん、個人的には(JALとカンタス航空の合弁LCCの)ジェットスター・ジャパンが黒字化したのは非常に大きな意味を持っていた。(何度も増資するなど)最初の頃は結構苦労していたので。お客様もたくさん乗っているし、収益性も出るようになってきた。

これまで個人的には、LCCのリスクとしてフルサービスキャリア(FSC)とのカニバリゼーション(売り上げの食い合い)があるのではないか、本当にマーケットが違うのかと考えてきた。ただLCCが新しい需要を掘り起こしていることがはっきりした。飛行機もある、マーケットもある。じゃあ誰がやるんだ。俺らがやるんだ、という流れだった。

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