JAL新社長に直撃、LCCで「B787」を飛ばす理由 整備一筋30年、赤坂社長が語る航空機の真髄
5年前だったらLCCには「NO」だった
――昨年発表した2020年までの中期経営計画では、自社でLCC事業を行うことには一切触れられていませんでした。なぜ今、中長距離LCC参入の表明に至ったのでしょうか。
参入の議論自体は、もう随分前からあった。決断を延ばしてきたわけではなく、LCCのいろいろな可能性や収益性を最後まで見極めたかった。運航機材として用いるB787の安定性もしっかり確認する必要があった。
整備本部長だった立場から言えば、(国内LCCが出始めた)5年前にこの話が出ていたら、僕は「NO」を突き付けたと思う。中長距離を運航できるのは787しかないと思っているが、バッテリーに起因する電気系統の問題など、機材としての品質が安定していなかった。当時、これを非常に稼働率の高いLCCに使う決断をするのは難しかっただろう。
そこからボーイングとも技術的な議論や改善をしながら、いろいろな改修をやってきた。本当に血のにじむような努力をして、本来787の持つ非常に高い性能が十分発揮できるようになった。このことが今回の決断に至った大きな要素の1つだといえる。
――2010年に経営破綻した際の公的資金による支援が、ANAとの競争をゆがめたとして、国土交通省がJALの新規投資や路線開設を制限する、通称「8.10ペーパー」が昨年3月末に期限を迎えました。このことも戦略を後押ししたのでしょうか。
8.10があったから、というわけではない。確かにペーパーは意識していたが、この話はまったく別。LCC新会社が拠点とする成田空港の発着枠が増える2020年の就航を狙うという事実があり、そこを目指して検討してきた。ギリギリのタイミングだったと思う。
787の話はもちろん、個人的には(JALとカンタス航空の合弁LCCの)ジェットスター・ジャパンが黒字化したのは非常に大きな意味を持っていた。(何度も増資するなど)最初の頃は結構苦労していたので。お客様もたくさん乗っているし、収益性も出るようになってきた。
これまで個人的には、LCCのリスクとしてフルサービスキャリア(FSC)とのカニバリゼーション(売り上げの食い合い)があるのではないか、本当にマーケットが違うのかと考えてきた。ただLCCが新しい需要を掘り起こしていることがはっきりした。飛行機もある、マーケットもある。じゃあ誰がやるんだ。俺らがやるんだ、という流れだった。
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