JAL新社長に直撃、LCCで「B787」を飛ばす理由 整備一筋30年、赤坂社長が語る航空機の真髄

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――中長距離LCCのビジネスモデルは、業界内でまだ確立されていない状況です。5月の発表時に参考にした会社として挙げていたノルウェージャン・エア・シャトルは787を大量導入した結果、直近は赤字に転落しています。収益性の確保に自信を持てるようになった背景は何でしょうか。

そもそも中距離路線を飛ばすということ自体が、誰でもできる話ではない。国内ではわれわれとANAしかない。ノルウェージャンとは異なり、もともとJAL本体で787を40機飛ばしている。LCCもグループ内になるので、オペレーションや整備面はスケールメリットを生かせる。787を単独で飛ばすキャリアよりもアドバンテージは大きい。

成田空港を飛び立つJALのボーイング「787-8」型機(撮影:尾形文繁)

さらに(ノルウェージャンが本拠とする)欧州とはマーケットがまったく異なる。周囲を海に囲まれた日本は地理的に有利で、日本人自体の需要が大きい。そこに訪日外国人がどんどん増えてくる。プレーヤーが限られるだけに、この事業は成功させなければならない。

路線としてはフルサービスと重なるところもあれば、LCCでこそ収益性が確保できるところの2通りがある。カニバリのリスクは考えていないので、要はLCCとしての需要がある路線をきちんと選んで、育てていくということに尽きる。個人的には今飛ばしていないところにできるだけ路線を張り、バリエーションを増やしていきたい。

1年に2機ずつ、慎重に増やす

――とはいえ株主などからは、未知の領域だけに事業性に対する不安の声も聞かれます。

2020年の就航時には2機体制だが、1年に2機ずつをメドに増やしていく。少しずつ実績を示すことで、ステークホルダーの皆さんが持っている疑問や不安に応えていかないといけない。初めから10機で、といったようにドカンとやるのではなく、慎重にスタートして徐々に拡大したい。

短距離LCCは競合もかなり多く、先に規模でマーケットを押さえてしまうほうがいいから、成長のスピードが速い。ただ長距離路線の場合は、まだ競争関係があまりない。環境はつねに変わるので油断はできないが、徐々に広げていくということで大丈夫だ。

――JALやANAのように大手が持つオペレーションの強みとは具体的に何でしょうか。

飛行機は車とは違う。安全に飛ばさなきゃいけない。さらに787は機材自体も高いし、部品も高い。多くの短距離LCCが運航しているボーイング「737」やエアバス「A320」とはメンテナンスコストが違う。B737やA320は中国やフィリピン、シンガポールなど、日本の近くに整備できるところがたくさんある。だが787は多くない。

長時間洋上飛行するための安全性の確保や、時差がある中での運航サポートも必要。さらに海外の就航先でのロジスティクスも必要になるが、既存のネットワークを活用すればいい。たとえば乗員をどこに泊まらせて、空港までどうやって送迎するかといったこと。1日1便しか飛ばない都市も出てくるだろう。すべて1つのノウハウであり、これを(新興LCCのように)一から作り上げるのは至難の業だ。

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