──たしか飛行機オタクでは。
飛行機にはよく乗る。3000回近くは乗ったか。飛行時間にして1万5000時間ぐらい。大手航空会社の機長と肩を並べると言っていいかもしれない。
金融マン時代に中東・アフリカを担当していた。その国で商売できるとしても、リスクが高すぎ、担保を取るしかない。それも動かせる担保の船か飛行機。船は価格変動がものすごいので担保として当てにならない。エジプト航空やサウジアラビア航空、それに北アフリカに本拠地がある航空会社がもっぱらだった。そのファイナンスで動きまくってもいた。
──操縦士と管制官との会話の描写も詳細です。
会話の内容はほとんどわからないものの最たるものだ。だから現役の管制官を紹介してもらって詳しく教えてもらった。プロ同士の会話で全面的な添削が必要だった。航空管制の用語は省略だらけだが、本人同士がわかりやすく直してくれたので、管制の場面はプロに遜色ない応答になっている。
つくづく感じたのは、飛行機を飛ばすのは本当に全当事者が大変だということだ。それを素人の熊本県と天草市がやっている。苦労は計り知れない。
──メールを重宝しています。
並行して3~4作を執筆している。年に3回ぐらい帰国して直接取材する一方、ロンドンなど海外にいてもインターネットとメールと電話で取材する。むしろそのほうが効率がいい。いきなりの取材では相手からの確かな答えは難しい。だが、メールで聞くと、思い出しながら詳しく書いてくれる。
おそらく今回はメールで3000通ぐらいはやり取りした。天草弁のなまりとはどういうものかも、音声データを添付したメールで確認できた。
人は見た目が9割、小説はラストが8割
──小説として大団円に成功?
使用機体の初代みぞか号の「第二の人生」を追いかけ、アブマックスというカナダのリース会社に突き当たった。ここでもメールが活躍した。詳細は本書を読んでほしい。天草エアラインという組織の物語であると同時に、ダッシュ8という飛行機の物語でもある。ダッシュ8の第二の人生で締めれば鮮烈な印象が残るのではないかと、ことさら工夫した。
人は見た目が9割といわれるが、小説はラストが8割。ラストが決まらないと、いくらいい話を書いても評価されないのがこれまでの経験だ。ラストをどうするか、1年ぐらい前から考えていた。
(聞き手・本誌:塚田紀史)
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