誰も知らなかった「天草エアライン」の凄み 「島のエアライン」を書いた黒木亮氏に聞く

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──たしか飛行機オタクでは。

飛行機にはよく乗る。3000回近くは乗ったか。飛行時間にして1万5000時間ぐらい。大手航空会社の機長と肩を並べると言っていいかもしれない。

金融マン時代に中東・アフリカを担当していた。その国で商売できるとしても、リスクが高すぎ、担保を取るしかない。それも動かせる担保の船か飛行機。船は価格変動がものすごいので担保として当てにならない。エジプト航空やサウジアラビア航空、それに北アフリカに本拠地がある航空会社がもっぱらだった。そのファイナンスで動きまくってもいた。

島のエアライン 上
『島のエアライン』上・下(黒木 亮 著/毎日新聞出版/各1500円+税/上325ページ/下334ページ)書影をクリックすると上巻のアマゾンのサイトにジャンプします

──操縦士と管制官との会話の描写も詳細です。

会話の内容はほとんどわからないものの最たるものだ。だから現役の管制官を紹介してもらって詳しく教えてもらった。プロ同士の会話で全面的な添削が必要だった。航空管制の用語は省略だらけだが、本人同士がわかりやすく直してくれたので、管制の場面はプロに遜色ない応答になっている。

つくづく感じたのは、飛行機を飛ばすのは本当に全当事者が大変だということだ。それを素人の熊本県と天草市がやっている。苦労は計り知れない。

──メールを重宝しています。

並行して3~4作を執筆している。年に3回ぐらい帰国して直接取材する一方、ロンドンなど海外にいてもインターネットとメールと電話で取材する。むしろそのほうが効率がいい。いきなりの取材では相手からの確かな答えは難しい。だが、メールで聞くと、思い出しながら詳しく書いてくれる。

おそらく今回はメールで3000通ぐらいはやり取りした。天草弁のなまりとはどういうものかも、音声データを添付したメールで確認できた。

人は見た目が9割、小説はラストが8割

──小説として大団円に成功?

使用機体の初代みぞか号の「第二の人生」を追いかけ、アブマックスというカナダのリース会社に突き当たった。ここでもメールが活躍した。詳細は本書を読んでほしい。天草エアラインという組織の物語であると同時に、ダッシュ8という飛行機の物語でもある。ダッシュ8の第二の人生で締めれば鮮烈な印象が残るのではないかと、ことさら工夫した。

人は見た目が9割といわれるが、小説はラストが8割。ラストが決まらないと、いくらいい話を書いても評価されないのがこれまでの経験だ。ラストをどうするか、1年ぐらい前から考えていた。

(聞き手・本誌:塚田紀史)

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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