日本の空を覆い始めたパイロット不足の難場 今の養成スタイルでは需要を埋めきれない

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現時点でさえ激しいパイロット争奪戦が、今後さらに激化すると予想されている(撮影:尾形文繁)

北海道を地盤とする地域航空会社のAIRDO(エア・ドゥ)が11月6~25日までの期間中に、羽田―札幌線と札幌―仙台線の2路線で計17往復34便を運休している。

たった2人の退職が正常な運航を妨げる

理由はパイロットの不足だ。39人いたボーイング737型機の機長のうち2人が退職し、その穴埋めができなかった。12月以降も場合によっては運休が続く可能性もある。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)といった大手航空会社に比べて規模が小さい航空会社とはいえ、たった2人の退職が正常な運航を妨げてしまうほど、パイロット不足は航空業界にとって課題になっている。

国土交通省は2022年時点における日本全体のパイロットの必要数を6700~7300人とする予測を発表している。LCC(格安航空会社)も含めて国内外で航空路線がどんどん拡充されているためだ。

一方、2017年における日本のパイロット総数は約5700人。この先5年間に最低でも1000人のパイロットの補充が必要となる計算だが、この間に年間100人のパイロットが退役するという試算もある。つまり、実際には5年間で1500人、年間平均300人のパイロットを新たに確保する必要が生じている。

日本のパイロットは主に航空会社、航空大学校、私立大学、民間でそれぞれ養成している。実際にはどれぐらいのパイロットを養成できるのか。

まず、航空会社の自社養成を試算してみよう。一時期中断していたものの近年再開され、大きな力となっている。JAL、ANA、スカイマーク合わせて50人程度が見込まれる。

航空大学校は来年度から定員をこれまでの年間72人から108人と50%の増員を計画し、現在採用中である。彼らが卒業するのは2020年以降ながら、訓練が順調に進めばこれまでの航空大学校の就職実績(約8割)を参考にすると80人が期待できる。

私大はそれぞれ定員が東海50人、桜美林30人、法政30人、崇城20人。実績値から私大全体で年間80人程度が見込める。民間の飛行学校卒業生は過去の実績から年間20人程度の養成になるだろう。

これらを総合するとパイロットは毎年230人程度の養成ができそうだ。だが、国交省の試算値に対しては毎年70人程度、計350人が不足する。現時点でさえ激しいパイロット争奪戦が、さらに激化することが予想される。

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