日本の空を覆い始めたパイロット不足の難場 今の養成スタイルでは需要を埋めきれない
これらによりアメリカの世論がパイロットへの規制強化に傾いていったのだが、結果としてパイロット不足という問題を引き起こすことになってしまった。現在この規制緩和に関する法改正が米国議会で審議されているところであるが、安全性の向上を志向して決められた法律を経済性の理由で覆すことはなかなか難しいのが現実である。
少ないパイの取り合いが激化する
現役パイロットの大量退役という大きな問題も抱えている。
米国では2021年から向こう20年間にメジャーエアラインのパイロット約4万5000人が退役する。
米国のパイロットのキャリアパスは、日本と違っていきなりメジャーのパイロットにはなれない。リージョナルやコミューターエアラインなどを経験して実績を積んだ後の民間人、もしくは軍出身者に限られる。その供給先である民間人で、かつ、メジャーの穴を埋める対象のパイロットは約1万8000人しかいないのが現実である。
また、軍は現時点でも約1500人のパイロットが不足しており、トランプ大統領が、民間に移った元軍人の軍への復帰を大幅に認める法令に署名をしたという事実を見ると、この問題がいかに深刻であるかが推測できる。
これらのことから現時点ではメジャーエアラインのパイロット不足は顕在化しておらず、リージョナルやコミューターエアラインにその影響が顕著に現れているわけである。したがって当然のことながら少ないパイの取り合いが正にカニバリズムの様相を呈してきている。
新人を獲得するために給与は倍額。その他、多額のボーナスや各種インセンティブの提供により各社は生き残りをかけている。
アメリカ以外の諸外国はどうか。
イギリスでは最近、LCCであるライアンエアーのパイロット不足による一部運休が話題となった。これはライアンエアーの労働条件に不満を持つパイロット140人をノルウェーのLCCノルウェージャン・エアシャトルが引き抜いたことによるもので、こういったことはパイロットに限らずどこの世界でも起こりうることだ。結果、ライアンエアーはアリタリアやエアベルリンなどからパイロットをリクルートしてその穴埋めに当てている。
現在イギリスではすでにライセンスを所持しているが乗務経験のない500人のパイロットが職を求めている状況であり、新人パイロットはむしろ余っている。どこの航空会社も「経験のある」パイロットを求めているのだ。
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