採用プロドットコム株式会社
2008年10月20日の日経新聞朝刊の一面に「大卒内定5年ぶり減」の見出しが躍ったことをご記憶の方も多いと思う。記事は、来春入社予定の新入社員は今春に比べて1.4%減少となり5年ぶりのマイナスを示す結果となったことを報じている。(2009年度採用状況調査、対象:主要企業1023社、回答企業:880社、10月1日時点の内定者の状況)記事では、採用数はマイナスになったが、「ここ数年の大手企業による大幅な大量採用を考えれば2009年の採用数は高水準」という見方もできるとしている。しかしその一方で、各社がエントリーの受け付けを開始している2010年採用については、7.6%の企業が「減らす」と回答しており、4.3%の「増やす」を上回ったことで、売り手市場が曲がり角に来たと論じている。
また、サブプライムショックに端を発した世界的金融危機からの回復には最低でも2~3年はかかるという予測のなか、10月20日には日本経団連の御手洗冨士夫会長が連合の高木剛会長との懇談のなかで、新規採用をめぐっては過去の「就職氷河期の再来も否定できない」と雇用への波及を懸念する声が出ていると述べた。
バブル経済絶頂時の平成元年前後、37~38万人程度だった大学の卒業者数は、新設大学や新設学部の増加による大学進学率上昇により、ほぼ1.5倍に増加、2009年3月に卒業する大学生の就職希望者数は44万3千人に達している。アメリカや新興国をマーケットとした輸出産業に牽引された成長ストーリーが描きにくい今、再び「選択と集中」が進むとすれば、それは新規採用のターゲット化が進むことになることを意味するのではないだろうか。
●2010年も引く手あまたの機電系人材
10月14日、東京赤坂のホテル-ニューオータニで金沢工業大学主催の「KIT人材開発セミナー」が開催された。セミナーの開催目的は、金沢工大が産学連携の一環として、また、就職情報会社ではできない、理工系学生を対象とした採用PR手法である産学連携インターンシップの認知度アップへの取り組みである。セミナーというにはイベントという言葉が似合うスケールで開催された「KIT人材開発セミナー」は、学長以下、数十名の教授も参加しての全学一丸のイベントとなった。教授が参加するというところが、全教授の半数ほどが民間企業出身者というこの大学らしいところだ。一方、求人側の企業だが、都内で開催されるこの機会を理系採用に課題を抱く企業が見逃すはずもなく、参加した採用担当者はおよそ1000名に達していた。
基調講演や学長のプレゼンテーション終了後に実施された立食パーティは、さながら名刺交換会の様相を呈していた。そこで、名刺交換のために各学科別の教授の前に並ぶ行列の長さに注目、しばらく観察してみることにした。あっという間に出来上がった行列の中で断トツに長いのが「電気電子工学科」、次いで「機械工学科」「情報通信工学科」と続く。余談だが、これらの学科の行列と対抗できるのは、パーティ会場に出店している銀座の某寿司店の屋台くらいだ。
人気学科に並ぶ採用担当者の胸につけた名札を見ると、これらの学科の教授と「少しでもお近づきになりたい」と願う採用担当者は業種にまったく偏りがない。メーカーはもちろん、情報機器商社やIT・ソフトウェア関係などなど、まさに引く手あまたの状態になっていることからも、ある特定の業界の求人意欲が萎えたからといって、人気学科に対する求人数が急減することは考えにくいと思われる。
当日、参加しなかったメーカーの採用担当者の皆さんに朗報があるとすれば、外資系を含む金融各社や総合商社、人気企業ランキングに名を連ねるような有名メーカーの姿がなかったことだろうか……
「KIT人材開発セミナー」の盛況ぶりだけを見て断言するわけではないが、2010年採用においても理系、特に機電系人気の傾向は引き続き収束しそうにない気配はプンプンだ。
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