教育のため専業主婦になる、中国人妻の実際 「会社に行っている場合ではない」妻たち

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小学4年生と中学1年生の子どもを持つ30代後半の女性、馬さんにも話を聞いてみた。

馬さんは数年前まで地元の企業で働いていたが、今は専業主婦だ。夫は会社を経営しており、経済的には恵まれているが、白さんと同じく、子どものために金銭的、時間的にかなりのものを負担している。

昨今、都市部では、子どものハードな勉強を付きっきりで見てあげるためや、学校やPTAの活動をするために会社を辞めて専業主婦になる、という人が少なくないが、この女性もそうしたひとりだ。

毎朝5時に起床。この家庭では家政婦を雇っていないため、自分で家族の食事を作り、6時半に小学生と中学生の2人の子どもを車に乗せて学校に送っていく。小学生の子どもの下校時間(午後3時半)に合わせて2時半には再び家を出なければならないので「1日のうち、自分の自由になる時間はお昼前後の2時間半くらいしかない。夜も11時ごろまで2人の勉強を見てあげたり、家庭教師も週2日は家に来るので、とても忙しくて、会社に行って働いている場合ではないと思った」そうだ。

ちなみに、上の子の家庭教師代(数学)は1回2時間で600元(約1万円)。3年前、私が上海の名門・復旦大学の数学科の学生に家庭教師のアルバイト代を尋ねたところ、1時間500元(約8500円)と話していたので、この家庭の家庭教師代は高いほうではないかもしれない。

宿題に懸ける親のメンツ

いずれにしても、日本では、「そこまでして親が子どもの宿題を自ら見てあげる必要はない(子ども自身の責任)」、あるいは「見てあげたくても時間がないし、難しくてわからない」と思う人もいると思うが、中国では「子どもが宿題を完成していかなければ、親のメンツが立たない。恥ずかしい」と思う人が多い。それに、そもそも小中学校の宿題の量も、中国と日本では大きく異なり、日本に親戚が住んでいる中国人によると「比べ物にならない」そうだ。だから、どうしても手助けせざるをえないという。

馬さんの家庭では、幼稚園は英会話の先生がいる私立に通わせていたため、幼稚園代だけで年間1人6万元(約100万円)もの費用がかかった。公立の幼稚園ならばその3分の1以下で済むが、「将来、子どもが海外に留学する可能性を考えて」その高額な園を選択したという。2人の子どもは小学校入学以来、ずっと英語の塾に通っており、たまに3連休があっても「子どもが塾を休めるのは1日だけ。送迎のために車は夫と私の2台買いました」というほどだ。

しかし、そうした努力のかいあって、上の子どもは昨年、市内の有名中学に合格した。東京でいえば富裕層が多く住む山の手地区にある中学だそうで、その女性は「今年、ヨーロッパの高校から訪問団が学校に来た際は、うちの子どもが学校の代表に選ばれて英語の通訳をしたんです」と、とてもうれしそうだった。

馬さんが目下、最も力を入れているのは中学のPTAの役員としての“仕事”だ。

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