教育のため専業主婦になる、中国人妻の実際

「会社に行っている場合ではない」妻たち

校門前にいくつも掲げられていたプラカードには、こんな言葉が書いてあった。

子どものカバンを持ってあげる親が大半だった(撮影:中島恵)

「書道、美術、篆刻(てんこく)学生募集中。いつでも入学できます」

「デッサン、絵画、毛筆、ピアノ、バイオリン、水泳、英語、数学、教えます」

まるで旅行の添乗員のように、塾の名前が書かれた旗を目印に高く掲げている人もいた。付近を観察して歩いていると、丈夫な布でできたナップサックやハデな手提げ袋を次々と手渡された。袋には塾の名前と住所、電話番号、QRコードなどの広告が印刷されてあり、販促物として、毎日のように保護者に無料で配布されているようだった。興味本位で2~3個もらってみたところ、袋の中には宣伝のチラシが入っていた。

学校帰りに塾に直行することは、もちろん日本でも珍しくない。だが、中国の場合、学校から塾(あるいは習い事)に行く際、子どもだけで行くことはできず、保護者やアルバイトが同行しなければならない。危険の回避や、塾側にとってはサービスの一環だが、その塾代は年々高額になっている。

習い事の費用は1カ月当たり約7万円

習い事の種類も、前述したように幅広く、豊富だ。中国にも日本のような大手の学習塾はあるが(最も有名なのは「学而思」(シュエアースー)という大手塾チェーンで全国200都市に支部がある)、それ以外にも無数の小規模、大規模の学習塾や習い事の教室があり、その数は年々増え続けている。

北京市内で小学3年生の子どもを育てる30代半ばの女性、白さんに話を聞いてみた。

「うちの子は絵画と水泳、数学に通わせています。料金はそれぞれ少しずつ異なりますが、1つの科目につき年間で1万~2万元(約17万円~約34万円)。3つ通わせていますから、5万元(約85万円)以上はかかっていますね。友達も習わせていますから、うちだけ習わせないわけにはいかない。仕方がないですよね。習い事も競争のうちですから」

習い事の費用は1カ月当たり約7万円と、日本のかなり熱心な家庭並みにかけている。中国の賃金水準や物価と比較するとかなり高いといえる。

この女性は共働きで、夫は外資系の大手企業に勤務。経済的にゆとりがある家庭だ(中国では共働きが一般的)。さらに祖父母からの経済的支援もあり、「都市部では人並みの教育を受けさせているほう」というが、送迎は(そのために田舎からわざわざ出てきてもらって同居している)祖母にすべて任せている。

なぜ学習塾だけでなく、絵画と水泳も習わせているかと聞いてみると「どこに才能が隠れているかわかりませんし、子どもの可能性を少しでも広げてあげたい。私たちが子どもの頃は、親にそんなおカネがなかったから、やりたくてもできなかった。それに今は中学受験や高校受験の際、一芸に秀でていると受験に有利になるのです。そのために書道や絵画を習う子も多い。今どきは勉強一辺倒だけじゃだめなんです」という。

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