野村さん自身の実体験もある。頭皮に炎症が出ている状態でも使えるシャンプーはないかと、Q&Aサイトで検索したことがあったが、欲しい情報になかなか出会えなかった。具体的な製品名を求める質問に対し、「アトピーにストレスは禁物だ」といった、的外れな回答の書き込みが多かったのだ。
また、症状によっても求める情報は異なる。野村さんは中度~重度の症状が出ていたため、せっかく欲しい情報にたどりついても、それが軽度の方向けでは使うことができなかった。
こうした課題を解決すべく作られたのがuntickleだ。特定の対策や治療法を推進するのではなく、あくまでプラットフォームとして、情報を整理して提示する。それによって、誰もが症状や状態に合わせた改善策を見つけられる。具体的には、登録ユーザーたちが投稿した、アトピーの改善に役立つ情報を、18種類の部位や、「かさかさ」「真っ赤」「ぐじゅぐじゅ」といった症状、生活シーンを組み合わせて検索できる。
たとえば、炎症があっても使えるシャンプーを探している場合、部位は「頭」、症状は「ぐじゅぐじゅ」、生活シーンは「入浴」と組み合わせて検索すると、求める情報へアクセスできる。
投稿者のプロフィール(アトピーの症状や部位、通っているクリニック、合併症の有無など)も閲覧できるため、「この方は自分に近い状態」「この方は自分とは違う」と判断し、情報の取捨選択を行えるのだ。
ユーザーからの反応は大きかった
サイトの立ち上げにあたって、プログラミングやデザインなどの専門業務は、賛同した仲間たちが手伝ってくれた。そういった支援に加え、IT企業で働いていた経験も持ち、アトピー患者の困り事も知り尽くした当事者が作ったサービスだけに、ユーザーからの反応は大きかった。会員数は約9000人に上り、活発な情報交換が行われている。
「爪にジェルネイルを塗るとかき壊しが浅くなる、という投稿があり、男性のユーザーの方が『試してみる』と反応していたんです。効果があったようで、その後、『すごくよかったです』と感想をいただきました。当事者同士が連携して、助け合う場をつくれたことが何より嬉しい。私自身も、日常生活を楽にする方法をたくさん知ることができました」
従来にないサービスで、当事者たちに支持されたuntickleは、国内外から評価された。野村さんは2016年、アジアで30歳以下の優れた人物を表彰する「Forbes Asia 30Under30」にも選出された。
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