アトピーで地獄を見た女子の「爽快な生き様」 私たちはその壮絶な実態を知らなすぎる

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アトピーの実態を、われわれはどれだけ知っているだろうか?(撮影:尾形文繁)

かゆみに耐えられず、爪を立ててバリバリとかく。皮膚は傷つき、赤黒く変色。いたるところにかさぶたと出血が見られる。

体を動かすだけで激痛が走るため、一日中ベッドで横になっている。衣服は、皮膚への負担を軽減するため、つねに大きめのパジャマ。炎症した箇所からにじみ出る、滲出(しんしゅつ)液という液体が付着し、独特のにおいが漂う――これは野村千代さん(31歳)が大学生のときに起きた、アトピーが重度化したときの症状である。

アトピーが重度化し、ゾンビみたいな状態に

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「皮膚はドロドロで、ゾンビみたいな状態でした。生き地獄ですよね。何でこんな状態で生きなきゃいけないんだ、どれだけ自分は不幸なんだ、と強く思っていました」

彼女は現在、自身と同じようにアトピーに苦しむ人の支援事業を行う、株式会社untickle(アンティクル)の代表を務める。今は症状が落ち着いているといい、明るい笑顔を振りまいたが、皮膚には赤みが目立ち、その闘病の歴史を表していた。

症状が重度化したエピソードを聞きながら、筆者は自分の無知さを恥じていた。アトピーに対し、「かゆくなる病気でしょ」くらいの認識しか持っていなかった。確かにかゆみは発生するが、軽度の場合でも、かゆさで熟睡できず、慢性的な睡眠不足になってしまうなど、さまざまな弊害があるという。野村さんのように、悪化すると、日常生活すら送れない状態になるケースもある。

日本には、600万人のアトピー患者がいるという(NPO法人日本アトピー協会通信誌「あとぴぃなう」)。国民の20人に1人は該当することになる。症状に差はあれど、アトピー患者の実際についてもっと知られてもいいのではないか。そんな思いから、今回の取材が実現した。

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