アトピーで地獄を見た女子の「爽快な生き様」 私たちはその壮絶な実態を知らなすぎる

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野村さんは1986年、日本人の父と、韓国人の母のもとに生まれた。赤ん坊の頃から皮膚は赤く、カサついていた。そのため、幼い頃から皮膚科に通う日々だった。日常生活に大きな支障が出ることはなかったが、大学3年生のときに突如、重度化。冒頭のような状態に陥った。その原因について野村さんは、「ステロイド(アトピーの代表的な治療薬)を急にやめたことだと思います」と話す。

根治治療法が確立していないために…

アトピーは、根治治療法が確立していない。長年、ステロイド剤などを使って対症療法をするくらいしか方法がないのが実情だ。が、症状の改善は容易でなく、次第に薬の量を増やしてしまうといったことに陥りがちになる。野村さんもその1人だった。

アトピー発症時の野村さん。重度のときはさらにひどくなるという(写真:野村さん提供)

「『朝と夜だけ塗りなさい』と処方されたのに、昼も使ったり、量も増やしたりしていて。そんな使い方をしていると、(耐性がついて)含有量が高いステロイドを塗っても、症状を抑えられなくなるんです。どんどん(症状が)ひどくなって、どうしようと思ったときに、『ステロイドはやめたほうがいい』といううわさを聞いて。それを信じてやめた途端、一気に悪化してしまいました」

野村さんは冒頭のような症状となり、大学を休学。周囲は青春まっただ中の日々を送っているのに、なぜ自分だけがこんな目に……とふさぎ込んだ。携帯電話の電源を切り、外とのつながりをシャットアウトして、一日中部屋にこもって過ごした。明るい場所にいることも苦痛で、部屋の雨戸はつねに閉めていた。「精神的に追い詰められていましたね」と、野村さんは当時を振り返る。

それでも、両親による看病や、食事を無添加・野菜中心にするなどしたところ、7~8カ月が過ぎたころから症状は治まっていった。さらに3カ月ほど経つと起き上がれるようになり、精神状態も安定。復学して無事に卒業した。

だが社会人になった後も、重度の症状は何度か訪れた。貿易会社やEコマースの運営会社で働くも、症状が悪化して退社。個人事業主として再始動したが、26歳のときに人生で4度目の大きな症状が訪れ、「もう逃れられない、アトピーに向き合おう!」と腹を決めた。

そこで2013年に始めたのが、アトピーの当事者たちが集まるSNS「untickle」の運営だ。先述したようにアトピーは治療法が確立されておらず、医師によっても考え方の違いが大きい。ネット上にはさまざまな情報が「氾濫している」状況で、野村さん自身も困ることが多かった。

「インターネットで検索すると、『ステロイドはやめるべき』と書いている当事者がいれば、『ステロイドを使っても問題ない』というドクターがいる。情報も断片的で、見る人が混乱してしまうのです」

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