日大アメフト選手の償いとメディアの無慈悲 ひどいのは監督、コーチ、学校だけではない

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もう1つ気になったのは、質問者たちの姿勢。「ミヤネ屋」(日本テレビ系)の中山正敏リポーター、「とくダネ!」(フジテレビ系)の伊藤利尋アナ、「スッキリ」(日本テレビ系)の大竹真リポーター、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)の小正裕佳子キャスター、「プライムニュース」(フジテレビ系)の木村拓也アナ、読売テレビの春川正明解説委員長が順に質問し、その後も「ゴゴスマ」(TBS系)、「モーニングショー」(テレビ朝日系)、「ビビット」(TBS系)らの番組関係者が続きました。

いずれも常識や人間性を求められるテレビ局のスタッフなのですが、「会見を開いてくれてありがとうございます」と感謝しつつも、質問の内容は発言を誘導するようなものばかりだったのです。

今回の会見で宮川選手は、「これ以上話すことがない」と言ってもいいほど、詳細にわたる経緯を語りました。また、宮川選手が語ろうとしていたのは謝罪と事実であり、監督やコーチの問題点ではありません。

怒りや憎しみを引き出そうとするメディア

しかし、各局のスタッフたちは、「監督、コーチはそれだけ怖い存在だった?」「監督、コーチの指示は『つぶせ』という内容だった? やらなかったらやらなかったでフットボールをやれない状況が生まれていた?」「監督、コーチはどんな存在?」「監督、コーチに信頼はあった?」「監督、コーチから理不尽も多々あった?」

「部内で監督、コーチの責任という声はあがっていた?」「コーチは『できませんでは済まされないぞ。わかってるな?』そういうことを言う人物?」「いまだに監督が指示のことを言わない事態をどう思う?」「誠意ある謝罪をしようという空気は感じない?」と、監督やコーチに関することばかり執拗に聞き続けました。

各局のスタッフたちは、20歳の学生に「監督やコーチに対する怒りと憎しみを引き出そう」とする誘導的な質問を続けたのです。勇気を振り絞って経緯の詳細を語ったにも関わらず、「まだ足りない」「もっと決定的な言葉を引き出そう」と似た質問を浴びせ続けるのは、配慮に欠けるとともに、番組の都合を優先させているだけではないでしょうか。

このような質問ラッシュは、不祥事を起こした芸能人、ビジネスパーソン、政治家などを追い込みたいときの常とう手段。しかし、今回の相手は、保護者や学校から守られてしかるべき学生であり、すでに言えることはすべて言っていただけに、メディアが寄ってたかって拷問をしているように見えてしまったのです。

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