華やかな学歴と現実のギャップ
「よく死にたくなります。かなり深刻な希死念慮がいつまでも抜けない。もう、ずっとそんな感じ。夜が危ない。仕事終わって1人でいるとき、死のうって考えますね。お客さんといるときは、演じているので“無”でいられるけど」
東京都台東区、JR鶯谷駅近くのファミレス。田中美幸さん(仮名、41歳)は、ひっきりなしにタバコを吸いながら深刻な状態を語る。語りながら大きなカバンを漁り、使い込まれているお薬手帳を取りだした。彼女の本名が刻まれ、複数の抗精神薬や睡眠薬が処方されていた。加えて精神薬の副作用を抑えるための薬がある。重なりに重なったカスケード状態だ。危険な精神状態であることは、薬名の羅列ですぐにわかった。
学位記を見せてもらったが、彼女は早稲田大学を卒業している。出身高校は全国的に有名な超進学校で、受験戦争を勝ち抜いた成功体験と、高学歴というプライドがある。しかし、彼女は専業の熟女風俗嬢だ。風俗嬢になって18年間が経ってしまった。華やかな学歴と現実のギャップも、精神状態の悪化に拍車をかけている理由の1つに見えた。
「死にたいみたいなことが、いちばんひどかったのは30代。私、なにしているの……って悩みすぎて、混乱して、逃げたくて何度もオーバードーズした。もう、薬じゃ死ねないことはわかっている。だから首を吊るとかしないと、死ぬことはできないってわかっています。40歳を超えて結局風俗嬢のままで、腹をくくって今は風俗で耐えるしかないと覚悟しているけど、年齢を重ねるごとに不安は大きくなるばかり」
家庭の事情も複雑なようだった。大学在学中に結婚、同じ男性と結婚離婚を繰り返したバツ3で、今春大学1年生になった息子がいる。息子は遠く離れた地方の実家で父親が面倒をみていて、学費はすべて彼女が支払っている。父親と息子は、彼女が精神疾患に苦しむことや、ずっと前から風俗嬢であることを知らない。
外見は、普通の中年女性だ。スーパーマーケットとかパチンコ店にいるような「普通のおばさん」である。カラダを売っても簡単には稼げない外見であり、年齢だ。鶯谷に多い、本番を売る違法店に所属し、巨乳と淫乱痴女、さらに最後までの生サービスを売りにしてなんとか集客し、東京で1人暮らしをしながら実家で生活する息子に学費を送っている。
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