風俗で18年働く「早稲田卒」41歳母の深い苦悩 息子の学費捻出のため、休みは1日もない

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鶯谷駅の徒歩圏にあるマンションで、1人暮らし。家賃は月9万円。店には基本的に休日は取らずに、毎日働くと伝えている。毎日、午前中から翌日朝方まで出勤状態にして自宅で待機する。お客がつけば店から連絡があり、自転車で鶯谷周辺の指定されたラブホテルへと向かう。男性客に本番サービスを提供して、終わればそのまま自転車で自宅へと戻る。1日何往復もする。

鶯谷の様子(写真:かみぞー / PIXTA)

「鶯谷のラブホテルは全部行っていますよ。それも何十回も。何年間も毎日やっているので、誰でもそうなります」

鶯谷は女性のセーフティネットである性風俗の中でも、もっとも下層の地域として知られる。関東圏から、稼げなくなった風俗嬢が集まる。多くは40歳以上の中年女性で60代、70代の女性も普通に働いている。風俗嬢の終着点と呼ばれ、他地域で淫を売る若い風俗嬢たちはおそらく誰もが“鶯谷まで落ちたくない”と心の奥底で思っている。田中さんは、その鶯谷に流れて6年目。東京に仲間や友達がいるわけでなく、淡々と自宅とホテルを行き来するだけの生活を送る。

「風俗嬢の仕事は向いていたので、ここまで続けてしまいました。ずっと強迫観念的に悩んできたけど、簡単にいえば、社会に所属することができないことがツラかった。すごく苦しみました。風俗は世間に認知された仕事ではないので、風俗嬢は職歴がないのと同じ。18年間なんのキャリアもないわけで、自分が社会で生きていてはいけないんじゃないか、みたいな感覚になる。しかも、立ち直りが効かない。40歳を超えて現実は受け入れたので、死にたくなることもあるけど、今はなんとか生き延びようって気持ちではいます」

家計簿に客数、指名数、1日の売り上げを記録しているというので見せてもらった。本当に週6日平均、朝から晩まで働いていた。2017年12月は27日出勤で61万円を稼いでいた。精神疾患になりながら鬼出勤と呼ばれる過密労働をしているので、現状は経済的には貧困ではない。しかし、お薬手帳の処方箋から察すると、すぐに休養するべき状態で、医者にもそう言われているという。病気で倒れてしまえば、風俗嬢には、なんの保証もない。さらに地方出身なので周囲に助けてくれる人は誰もいない。精神状態が悪いからと仕事を休めば、生活保護しか頼る術がなくなる。

「息子の大学費用のために、なんとか稼がなければならないんです。それはすごく重荷で、ずっと精神状態も悪いけど、頑張るしかないですね」

無理してカラダを売りながら、命を削って生活を維持する深刻な状態だった。灰皿は早くも吸い殻が山盛りになっていた。ヘビースモーカーなんてものではない。明らかにタバコを吸いすぎだった。

“鶯谷”は一大デリヘル街

ここ鶯谷の説明を簡単にしておこう。JR山手線鶯谷駅に面した線路を底辺にして、駅を囲うように通る言問通りまでの台形の土地が、台東区根岸1丁目。300メートル四方ほどの小さな街で約50軒のラブホテルが密集する。利便性の高い駅前からラブホテルばかりで、狭間に立つ賃貸マンションは風俗店をどんどんテナントとした。鶯谷駅周辺は“鶯谷”と呼ばれる一大デリヘル街となった。

鶯谷は、行き場のなくなった風俗嬢が低価格で本番行為を売ることが常態化していて、カラダを売っても普通の生活ができない貧困女性の巣窟となっている。実際に生活保護の受給者も多い。月40万~60万円を稼ぐ田中さんはおそらく鶯谷では最も高収入な部類で、それは休まずに午前中から朝方まで客を取るという長時間労働をしているからだ。

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