言葉の持つ力というものはあります。けれども、実際のやり取りの中で優位に立つのは、言葉選びではなく、表情や言い方なのです。ですから、伝えたい内容と表情、そして語調(声の表情)を一致させないと、真意はなかなか伝わらないのです。
しかし、この一致させるという行動は、なかなか難しいところがあります。なぜなら、相手との間に波風を立てたくない、相手から嫌われたくないという思いが強いと、本気で断ったり怒りをあらわにして嫌な人間だと思われたくないという気持ちが先行し、自己防衛から、つい曖昧な態度をとってしまいがちになるからです。
また、照れくささなどから、褒めたりねぎらうときに無表情になってしまう場合もあります。すると、プラスの思いを伝えたくても、嫌みを言われているのかなと誤解されることさえあります。
防衛策として気持ちを封印している
そしてもう1つは、自分では話の内容に沿った表情をしている「つもり」の方が多いことです。管理職研修などをしていると顕著に感じられるのは、表情が乏しいということ。特に男性のビジネスマンはさまざまな経験を積んでいくのに従い、相手に自分の気持ちを読み取られないための防衛策として、気持ちを封印するすべを身に付けている場合があります。
相手に読み取られないために表情に出さないという習慣が、いざ表現しようと思ったときにうまくいかないわけです。無表情は、何を考えているのかがわかりづらいために、相手に威圧感や圧迫感、緊張感を与えます。そのつもりでなくとも、昨今言われているハラスメントにさえなりかねないのです。
自分の表情はなかなか自分でチェックできませんので、親しい人や家族に尋ねてみるのもよいかと思います。
怒ってもいないのに「怒ってる?」と聞かれたりする方は、その傾向が強いので、表情を動かすことを積極的に試みてください。いつも笑っていろということではありません。ただ、表情が固まったまま動かないということを避け、表情を変化させることを意識することから始めていただければと思います。頬骨の下あたりをマッサージする、口を大きく開けて話すなど、表情筋を意識することが大切です。
声の表情も非言語情報にとって大切です。
相手に何かを伝えたい、わかってほしいときは、「少しゆっくり」「少し低め」を心がけてください。こちらの伝えたい気持ちが強かったり、一生懸命になると声が高く、早くなりがちですが、こちらの思いとは裏腹に相手に伝わりにくくなります。
特に女性の場合は、改まった場面や緊張すると声が高くなる傾向があります。相手に受け取ってもらうためには、音域を少し下げて穏やかに伝えることも大切です。
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