熟年パパが直面する「子育て中の介護」問題 親が倒れたら、おカネはいくらかかるのか

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介護で疲弊する多くの原因は、「人に委ねたり、託したりすることができないから」。すべてを抱え込もうとすれば、生活が回らなくなるのは当然です。感情に任せているだけでは、雪だるま式に家族の負担が膨れ上がってしまいます。

「多くの親御さんは、自分のために子どもや孫の生活を犠牲にすることは望んでいないはずです。社会人として活躍する姿を喜んでくれていた親御さんを思い出せば、介護のために仕事を辞めるより、キャリアを続けていくべきだと思えるのではないでしょうか。また、妻にすべて任せきりにした揚げ句、介護虐待にまで追い込んでしまうケースもあります。そうならないために、妻の気持ちに寄り添いながら、しっかりと目の前にある状況を把握し、タスクの整理と管理を行う心構えが必要ですね」

大事なのは、直接介護することではなく、これまで仕事で培ったビジネススキルを生かし、「客観性を持って、プロをマッチングすること」です。

「目標は、あくまで『介護を必要とする親に、快適な生活をしてもらうこと』。任せられる介護チームを作り、空いた手で愛情を傾けることのほうが大事なのです。これらをしっかり理解したうえで、介護保険制度の全体像を把握しましょう。プロに頼れることや任せるべき範囲を把握することはもちろん、何にどれくらいおカネがかかるのかを把握すれば、漠然とした不安を解消でき、マネーの心積もりもできますよ」

とはいえ、「親はまだまだ元気なのに、今からやるべき?」と思う人もいるでしょう。その必要性やタイミングを知るために、ここからは介護生活が始まるパターンをご紹介します。

「ある日突然」ではなく、必ず「兆候」がある

多くの人は、「介護生活は、ある日突然始まるもの」だと考えていますが、川内さんによれば「その前に、必ず何らかの兆候がある」そうです。

「大きくは2つのパターンに分かれます。例を挙げると、まず1つ目は、高血圧の父親が倒れ、病院に運ばれたという連絡が入るケース。緊急手術で一命を取り留めるも、右半身にマヒが残ってしまったのに、病院側からは1カ月で退院を迫られてしまいます。母親に任せきりにもできず、しかし、子どももいるのにどうしよう、と。2つ目は、深夜に電話が鳴り、『警察であなたの母親を保護している』と言われるケース。父親が先立ったのち、田舎で1人暮らしをしている母親が認知症になり、徘徊にまで至ってから発覚するわけです」

どちらも「ある日突然」の出来事に見えますが、前者の場合には「高血圧」、後者の場合には「1人暮らし」という文脈がすでにあります。高血圧の場合、生活習慣や薬での改善を怠れば、脳梗塞や心筋梗塞の発症につながる可能性が。一方、女性に多いとされるアルツハイマー型の認知症も、突然発症するわけではなく、それより以前から記憶障害や判断力の低下などが始まっているのです。

「『そうなってから慌てる』のではなく、『そうなる前から状態を把握しておくこと』が必要です。親御さんが抱えている症状や過去の病歴を知れば、それが進行すると何が起きるのかを想定できます。また、アルツハイマー型の認知症の場合は、約束を忘れる、部屋が散らかっている、季節に合わない服装をするなど、初期段階からさまざまな兆候があるものなのです。介護が必要になってからではなく、何もないうちから定期的に様子を見に行くことが大事ですね」

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