熟年パパが直面する「子育て中の介護」問題 親が倒れたら、おカネはいくらかかるのか

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親の病気や異変に不安を感じたなら、まず各地域の地域包括支援センターに相談すること。社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの資格を持つ職員が相談に乗ってくれる、介護全般の相談窓口です。

「親御さんの家の住所と“地域包括支援センター”でネット検索して調べた番号に電話し、現在の症状やおかしいと感じた兆候について相談してみてください。今後の対策や対処法を教えてくれますし、地域によっては、独自の見守りサービスを提供していたり、認知症予防の体操指導に加え、本人を誘う声がけまでしてくれたりするところもあります。利用できるものはどんどん使いましょう。また、『親に許可を取ってから』と考える人も多いですが、それは必要ありません。本人の意思に反する行為に抵抗を感じるのはわかりますが、症状が進行してしまえば、親御さん自身に判断能力がなくなるのです」

介護生活には、本人ではなく、家族が判断しなくてはならない場面がたくさんあります。これは、延命治療の可否はもちろん、施設や病院に求める対応にも関連してくることです。たとえば、お酒が大好きな父親の場合、症状の改善が見込めない段階まできたら、「無理やり延命するより、好きなお酒を少しでも飲ませてあげたい」などの要望を出すこともできます。

「親御さんが元気なうちに定期的に顔を合わせることは、状況の把握に役立つだけでなく、本人が『人生において、何を大事にしているのか』を知る機会にもなります。親子の関係も深まりますし、家族が判断しなければならない場面がきても、本人の意思を尊重することができると思います」

また、介護離職に追い込まれる人には、人事担当者などに相談していないケースも多くあるそうです。しかし、企業によっては、使える制度が整備されていたり、イレギュラーな対応をしてくれたりすることも。何事も自己判断でタイミングを逸するより、「まずは相談する」という心構えを持ちましょう。

介護にかかるおカネと、よいサービスの選び方

それでは、「そのとき」がきたら、家族には何が求められるのでしょう。まず、介護にどれくらいのおカネがかかるのか、ざっくりと川内さんに教えてもらいました。

「介護ベッドや住宅の改装などにかかる一時費用の平均は80万円程度ですが、介護保険を申請し、保険適用されるものであれば原則1割程度の負担(年収ラインによっては2~3割程度)で済みます。毎月の介護サービスの利用料金は平均で月額7万9000円です。ただし、在宅介護でヘルパーのみを利用する場合と、日中だけのデイサービスを利用する場合、さらに24時間365日のケアを任せられる老人ホームに入居する場合では、かかる費用が変わってきます。

そして、介護期間の平均は4年11カ月。こちらも現在介護中の方を含むため、介護を終えるまでの平均期間とは言えませんが、それらを前提としたうえで、すべての平均値を基に単純計算すると、1人当たりの介護費用は約550万円となります」(公益財団法人生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」調べ)

両親ともに介護するなら、その費用は約1100万円。かなりの金額になりますが、家族がすべて負担するわけではないそうです。

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