熟年パパが直面する「子育て中の介護」問題

親が倒れたら、おカネはいくらかかるのか

「仕事で重要な判断を下したり、部下のタスク管理をしたりする立場にいても、いざ親御さんが倒れると、判断能力を失いがちです。親元に毎週通う人に『タスクとして何をしているのか』と聞くと、その多くは単に買い物や声がけだったりするんですよ。しかし、それが本当に“良いケア”につながるのかといえば、そうではない。『自分が直接何かしなければ、親不孝だ』と考えてしまう気持ちもわかりますが、生活を犠牲にして疲弊し、精神的にも追い込まれるような介護は続きません。プロに頼れるところは頼るべきですし、要介護度が上がれば、プロに任せなくては解決できない領域が増えていくものです」

そう。介護は“精神論”だけでできるものではないのです。そこには、“客観性”と“技術や知識”が必要。たとえば介護をテーマにしたドラマに、認知症のおばあちゃんがはしやスプーンを使わず、手づかみでものを食べるシーンが出てきたりしますよね。

NPO法人となりのかいご代表の川内潤さん。近著にポプラ社『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(筆者撮影)

家族が一生懸命に声がけし、スプーンを手に持たせようと何度繰り返しても、やはり手づかみで食べてしまう。「介護とはこういうものか」と暗い気持ちになりますが、しかし、プロが適切な対応をすればよい方向に転じるケースも多いそうです。

「認知症には、“失行”という症状があります。複数の手順や工程を経ることが難しく、ただお皿とスプーンを並べても、『スプーンを取ってから、お皿の中身をすくう』という段取りそのものができなくなるのです。介護の専門知識を持つプロなら、客観性を持って状況判断したうえで、お皿を遠くに置き、スプーンを取ってもらってから、お皿を近づけてすくってもらう流れを作るなど、適切な対応ができます」

営業社員がいきなりITエンジニアになれないのと同じで、いきなり介護士にはなれません。ましてや、相手は自分の親。客観的になる以前に、ショックを受けたり、感情的になったりしてしまうものでしょう。

「元気だった昔の姿とのギャップに苦しみ、ついきつく当たってしまい、そんな自分に落ち込む人もいますね。これが続けば、完全に負のスパイラルに入ってしまい、介護虐待につながるケースもあります。しかし、そうなってしまうのは愛情が深いからこそなのです。愛情がなければ、それこそ人任せにできるわけですから」

「美しい介護」より「プロのチーム作り」を

「自分がすべての面倒を見る『美しい介護』には無理がある」。川内さんは、介護職として多くの現場に携わった経験から、きっぱりと断言します。

「まずは『家族が直接、すべての介護をするべき』という呪縛を解くべきです。家族の役割は、直接介護することや、なるべく一緒にいることではありません。そもそも、これまでと同様に働きながら介護を続けること自体に無理がある。介護に対し、『無償の愛で、ただ尽くすイメージ』を持つ人もいますが、それでは自分の生活が成り立たなくなります。一時の感情や理想論に左右されていては、どこまでやるのか線引きができなくなり、最悪の場合、介護離職に追い込まれる人もいます。人任せにしたくないという気持ちをぐっとこらえ、『やらないことも努力なのだ』と認識しましょう」

次ページ介護で疲弊する多くの原因
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • トクを積む習慣
  • 就職四季報プラスワン
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 晩婚さんいらっしゃい!
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
ZOZOに立ちはだかる<br>「ゾゾ離れ」より深刻な課題

盤石だったZOZOの収益基盤が揺らぎ始めた。常時割引の有料会員サービスで混乱を招いたが、さらに深刻な事態が。今年度の通期業績が上場後初の営業減益になる見通しとなったのだ。上場以来最大の正念場を乗り越えることができるか?