日本人はナイキの躍進から何を学ぶべきか? 創業者フィル・ナイト氏への直撃取材を敢行
今でこそ、ランニングを楽しむ多くの市民ランナーがいて、最新のシューズを履いているが、1960~70年代くらいは、「本気のランナー」しか、そうした靴を求めなかったという。ストリートファッションなども、当然まだない。
そんな中でも、品質のいいシューズを作り、それを一人でも多くの人に履いてほしいということを、ナイト氏は「熱」を持って考えていたし、そんな彼に自身をダブらせたオニツカの創業者・鬼塚喜八郎氏も同じことを考えていた。その「情熱」が、事業を前に進めたのだ。
ナイト氏はこうも言った。「日商岩井は、われわれの性格もよく知っていたし、われわれ経営陣のことを信用してくれていた。もっと大きな会社になると彼らが信じていたからこそ、支持してくれたのでしょう」
ナイト氏から日本へのメッセージ
ここで冒頭の「熱」「情熱」の話に、再び戻りたい。彼らを突き動かしていたものは、今のようなデジタルな時代には青臭く聞こえてしまうかもしれないが、ものすごくアナログな「気持ち」だったり、「人とのつながり」だったりするのだ。
もちろん、ナイキというメガ企業まで成長させた彼らが言うからこそ、カッコよく聞こえるのかもしれないが、当時、リスクを取って支援に乗り出した日商岩井の人たちも含めて、彼らが持っていた「熱」は、何か大事なものを私たちに伝えてくれているような気がする。
限られた時間のインタビューで、いちばん聞きたかったことが、今の日本経済、日本企業、それに日本のビジネスパーソンへの「言葉」だ。『シュードッグ』からは、「昔の日本にこそベンチャー精神、起業家を育てる精神があった」ことがあふれるほどに伝わってくる。失われた20年とも言われるバブル崩壊からの日本の復活は、いまだ道半ば。リスクを取って、新たな挑戦を続けたナイト氏の姿勢こそ、今の日本に必要なものではないか。
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