早稲田で老舗ラーメン店が続々閉店する事情 生き残る「メルシー」にすら漂う危機感

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1958年に創業し、途中で一度移転したが、今年で60年になる。2代目の小林一浩さんが先代の味を受け継いでいる。ラーメンは400円。豚骨・鶏ガラがベースとなったスープに煮干がほんのり効いている。濃いめの醤油ダレがビシッと効いて中太の麺によく絡む。コショウをかけたり、お酢をかけたり、ラー油をかけたり、お客はそれぞれの楽しみ方で美味しそうに麺をすすっている。

2代目の小林一浩さんが先代の味を受け継いでいる(筆者撮影)

しかし、そこには学生の姿はちらほら。お客さんはサラリーマンや近所の年配の方々がメインだった。

「客層はだいぶ変わりました。学生は減りましたね。学生はこってりしたものが好きみたいで、新しいお店に行っているみたいです。老舗がどんどん閉めていますよね。交流があるわけではないが寂しいですね。さすがにうちも危機感はあります」(小林店主)

「メルシー」はワセメシの象徴的なお店。メルシーですらこの状態では、他のお店が閉店に追い込まれるのもやむなしということなのか。

老舗ラーメン店が続々と閉まる要因は

BS-TBS「郷愁の街角ラーメン」を監修し、“ノスタルジックラーメン”を多数取材するラーメン評論家の山路力也さんは、早稲田周辺で老舗ラーメン店が続々と閉まる要因をこう分析する。

メニュー(筆者撮影)

「戦後から高度成長期、60~70年前に開いたお店は後継者問題にぶち当たっています。しかし、現代の価値観として『家業』という考え方が薄れてきていて、親のほうも子どもに継がせたがらなくなっています。老舗は持ち物件で家族経営をやっているお店が多く、ランニングコストもそう高くない。ある意味ルーティーンに近い仕組みで営業しているので、続けやすいはず。儲からないので閉めたというケースはそうそうなく、原因はほぼ後継者問題であり、そもそも自分の代で閉めようと思っているお店も多いのが現状です」(山路氏)

「家業制度」の崩壊こそが、老舗の閉店の真相だという。個人商店は決して儲からなくなったのではなく、後継者を取らずにそのまま閉店し、その跡地に大手チェーンが入ってきている図式だ。決して客を食われたから閉店しているのではない。

街の象徴として長く残ってほしいというのはわれわれの一方的な思い。あくまで商売としてお店をやるのであれば、子どもに継がせることがベストとは限らないのだ。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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