未婚女性の「専業主婦志向」が実現困難な理由 年収に関係なく未婚男には「共働き派」が多い

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今回の調査で明らかになったのは、未婚と既婚、男性と女性の意識が正反対であるということです。これは未婚者の「結婚生活の理想ルート」が現実を前に大きく迂回を余儀なくされているということです。

データ上、未婚男性は年収の多寡に限らず「共働き派」が多数ですが、はたして「子育て」というハードなタスクを抱えたときも考え方が変わらないのかは不明です。むしろ未婚男性に限らず最初の子が生まれるまでは既婚男性ですら、子育てというものをあまり自分事としてとらえていないように思います。

夫婦全体での専業主婦率は36%ですが、これは子の有無を勘案しない全体の数字です。末子が0歳の時の専業主婦率は61%、1歳の時も52%です(2015年国勢調査より)。子どもが小さい時には、過半数の夫婦が専業主婦形態をとらざるをえないというのが現実なのです。

既婚者たちはそうした現実を経験したうえで、「やはり育児と仕事の両立は大変だ」と「専業主婦派」に鞍替えする層もいるでしょう。結婚前の希望や理想は、結婚生活という現実の前にいや応なく修正を迫られ、適応した姿が現在の共働き世帯の多さではないかと思います。

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という専業主婦型の考え方にしても、それを時代遅れの価値観と切り捨てられません。夫婦それぞれの事情の中で了解し合い、互いに相手の役割を尊重していかれるなら、むしろ専業主婦型は理にかなった形態かもしれないからです。

「働く専業主婦」にならないために

一方で、子が生まれても仕事を継続したいと願う女性もいるでしょう。そうした場合に、夫婦だけの閉じた世界だけで解決しようとすると、結局どちらかの(多くは妻側の)自己犠牲の上に成り立つ解決策しか生まれません。見かけ上「共働き」であっても実質「働く専業主婦」となっている女性も多いでしょう。

極端な話、家事や育児という部分をすべて家事代行サービスやベビーシッターに外注してしまうという発想もあると思います。もちろん、そのためには、社会的制度による費用負担の改善、企業側の協力意識、サービス事業者側の安全面、など検討すべき課題は山積みです。

が、夫婦間での無償行動だけしか解決策がないと窮屈に考えず、「外注できるものは外注していいんだ」という考えも選択肢とする。そのために夫婦二馬力で共働きする。夫婦間だけの自己責任論にするのではなく、外とつながり稼いだおカネを循環して解決していく。そんな方向を模索していくべき時期がそろそろ来ているのではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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