孤独な人に「耐え続けろ」というのは残酷だ

死亡リスクは「毎日タバコ15本」に匹敵する

同調圧力の強い「集団主義」とされる日本社会の中で、その抑圧から離れ、「個」として「群れ」から外れることは「かっこいい」こととみなされる側面もあるだろう。

「日本人は集団性が強く『個』が確立していないのではなく、『個』が確立され過ぎている国民」「日本人は個として孤独だから、群集を組んだときに、異常に群集心理が出る」とかつて、作家・安部公房氏は逆説を唱えたが、西欧の「個人主義」が歪んだ形で植え付けられたという指摘もある。

一方で、「個人主義」と言われる欧米諸国では、個々が独立した存在であるからこそ、「つながり」の重要性をより強く認識している。人間は「ソーシャルアニマル(社会的動物)」であり、「他者との関係性において存在する存在」であり、「独りで完結することはない」という考え方が根強い。

孤独は「現代の伝染病」だ

欧米との文化的・歴史的な背景の違いはあるとしても、同じ人間として、日本人だけが特別に孤独耐性が高い、ということではないだろう。実際、「孤独」は、今、世界の多くの国々で、「現代のエピデミック(伝染病)」ととらえられており、アメリカやイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、インドなど、あらゆる国のメディアで、毎日のようにその蔓延が危惧され、喧伝されている。

日本では、独居老人が、独りで死を迎える「孤独死」が問題視されることは多い。物理的に孤立することで、体調に変化があっても気づかれず、適切なケアが受けられず、死に至ることへの恐怖感は多くの日本人に共有されている。しかし、本質的な問題は、独りで死んでいく「孤独死」ではなく、「孤独による死」である。

「孤独」は、まさに「万病のもと」だ。気づかぬうちに、多くの人の心と体をむしばみ、その寿命をすり減らしていく。アメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授(心理学)は2010年、148の研究、30万人以上のデータを対象とした分析を行い、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」とする結果を発表した。

そのうえで、①孤独の死亡リスクは、1日タバコ15本吸うことに匹敵、② アルコール依存症であることに匹敵、③ 運動をしないことよりも高い、④ 肥満の2倍高い、と結論づけた。

また、2015年の研究では、70の研究、340万人のデータをもとに、「社会的孤立」の場合は29%、「孤独」の場合は26%、「1人暮らし」の場合は32%も7年以内に死ぬ確率が高まるとの結果を導き出した。

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