脳梗塞で人生に絶望、何が彼を救ったか?

介護とは「生きててよかった」瞬間の創造だ

定年まであと半年となった2012年の夏、いつもの飲み屋から自宅に帰り、床に就くと、今まで経験したことのないような頭痛がAさんを襲います。あまりの痛さに義姉に電話をすると、すぐに救急車を呼んで病院へ行くよう諭されました。なんとか力を振り絞り、119番へ電話しましたが、Aさんにはその後の記憶はありません。

気がつくとAさんは病室のベッドにいました。思うように左手、左足を動かすことができませんでした。また、すべての歯は抜け落ちていました。そして、医師からは「あなたは脳梗塞により危篤状態となり、あと一歩遅ければ亡くなっていたかもしれない」と説明を受けました。

Aさんは、変わり果てた自分の姿を受け入れることができず、自暴自棄になりました。医師や親族からは、自宅へ帰ることはあきらめ、介護施設へ入所することを提案されます。どうでもよくなったAさんは、言われるがまま、施設入所を決めました。しかしいざ施設と契約する段階になったとき、自分でもよくわからない感情が込み上げ、やっぱり家へ帰ると泣きながら周囲に懇願したのでした。

初対面の介護職に言い放った言葉

病院関係者から介護職のところに連絡があり、介護職はすぐにAさんのいる病室を訪れました。はじめて会った介護職に対してAさんが言った言葉は、今でもその介護職の記憶に鮮明に残っているそうです。

「俺には生きる価値がない。あなたに用はないから帰ってくれ」

介護職は、この日は簡単な挨拶だけで済ませるしかありませんでした。その後、この介護職は定期的にAさんを訪ね、少しずつ馴染んでいき、Aさんが自宅へ帰るための準備を進めました。

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