「日本人はクリエーティブでない」はウソ 「スキル」に差はない!では何が足りないのか?

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松本:日本には、これまで3度、ベンチャーブームがあったと言われています。高度経済成長の影響を受けた1970年代前半、ハイテク精密機械を中心にした1980年代、そして「ドットコム・バブル」とも称されたIT関連市場の急成長に支えられた1990年代終わりから2000年代初めにかけてです。ただ、どれも「カルチャー」として定着しなかった。一部の飛び抜けた人たちが変わったことをして成功しただけ――と。

とはいえ、現在は、ニューヨークでも、シリコンバレー同様にスタートアップシーンが盛り上がり、定着しようとしている。だったら、日本でもシリコンバレーのように「カルチャー」ができる。それにより成功者が増えることで、シリコンバレーのような好循環を生む「エコシステム」ができるはずなんです。

多様性が生む“ぶつかる”文化が必要

松本 真尚
1970年7月生まれ。99年、4社のベンチャー企業を集めたピー・アイ・エムを設立し、CEOに就任。翌2000年にヤフーと54億円で合併後、ヤフー関連会社への出資案件の推進をはじめ、ヤフーの井上雅博・元社長の下、ヤフーBB、ヤフーショッピングの立ち上げを行う。また、ソフトバンクの孫正義・社長の下でVodafoneの買収に関わった。ソフトバンクモバイルのプロダクト・サービス本部サービスコンテンツマーケティング統括部部長およびヤフーのモバイル事業部長を兼任、ヤフーのR&D統括本部フロントエンド開発本部などを歴任。CIO時代にはヤフー初の海外事業をインドにてスタートさせた。現在は、WiL共同創業者兼CSO

松本:僕は、ヤフーでの最後の仕事が、ソフトバンクとインドの一大商社とのジョイントベンチャーを作ることでした。インドでも日本でもそうなのですが、単一民族なのです。「日本人、インド人」がいて、それ以外は「外国人」。ただ、ヤフー時代には、多いときに3カ月に1度、シリコンバレーを訪れましたが、シリコンバレーはさまざまな国籍の人がいる「人種のるつぼ」なので「まずディスカッション」という“ぶつかる文化”がある。多国籍である以上、他民族で多様なバックグラウンドがあり、考え方、カルチャーが違います。そうした環境下だと、「言わずもがな」の暗黙知はなく、まず「ディスカッッション」になる。

だからこそ、企業内の意思決定ブロセスを見ても、違います。日本だと、基本的に上司が「ここがダメ」と言えば、「わかりました。直してきます」というプロセスが延々回る。ヤフーのときもそうでした。

ただよく考えると、それはおかしい。僕は「ヤフージャパン」全体のサービスを見ていたのですが、そうなると、たとえば、検索のことは1日に10分くらいしか考えられない。一方、検索担当者は1日中検索のことを考えている。それなのに、僕の言うことを素直に「聞く」というのはいいことだとは思いません。むしろ、知識や情報は担当者のほうが上なんだから、「なぜ」「どうして」というディスカッションがしたかった。にもかかわらず、一度却下すると「わかりました。直してきます」になっちゃう(笑)。

一方で、ジェリー・ヤン(米ヤフー 共同創業者)をはじめ米ヤフーの人たちは、僕がどういったポジションかは気にせずに、僕の言うことに耳を傾けてくれたし、僕が詳しい部分に関しては「そうだね」と納得もしてくれた。上司というボジションで話をしない、「みんなが対等」でぶつかり合うというのが、シリコンバレーで感じたいちばんのカルチャーですね。

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