松本:日本には、これまで3度、ベンチャーブームがあったと言われています。高度経済成長の影響を受けた1970年代前半、ハイテク精密機械を中心にした1980年代、そして「ドットコム・バブル」とも称されたIT関連市場の急成長に支えられた1990年代終わりから2000年代初めにかけてです。ただ、どれも「カルチャー」として定着しなかった。一部の飛び抜けた人たちが変わったことをして成功しただけ――と。
とはいえ、現在は、ニューヨークでも、シリコンバレー同様にスタートアップシーンが盛り上がり、定着しようとしている。だったら、日本でもシリコンバレーのように「カルチャー」ができる。それにより成功者が増えることで、シリコンバレーのような好循環を生む「エコシステム」ができるはずなんです。
多様性が生む“ぶつかる”文化が必要
松本:僕は、ヤフーでの最後の仕事が、ソフトバンクとインドの一大商社とのジョイントベンチャーを作ることでした。インドでも日本でもそうなのですが、単一民族なのです。「日本人、インド人」がいて、それ以外は「外国人」。ただ、ヤフー時代には、多いときに3カ月に1度、シリコンバレーを訪れましたが、シリコンバレーはさまざまな国籍の人がいる「人種のるつぼ」なので「まずディスカッション」という“ぶつかる文化”がある。多国籍である以上、他民族で多様なバックグラウンドがあり、考え方、カルチャーが違います。そうした環境下だと、「言わずもがな」の暗黙知はなく、まず「ディスカッッション」になる。
だからこそ、企業内の意思決定ブロセスを見ても、違います。日本だと、基本的に上司が「ここがダメ」と言えば、「わかりました。直してきます」というプロセスが延々回る。ヤフーのときもそうでした。
ただよく考えると、それはおかしい。僕は「ヤフージャパン」全体のサービスを見ていたのですが、そうなると、たとえば、検索のことは1日に10分くらいしか考えられない。一方、検索担当者は1日中検索のことを考えている。それなのに、僕の言うことを素直に「聞く」というのはいいことだとは思いません。むしろ、知識や情報は担当者のほうが上なんだから、「なぜ」「どうして」というディスカッションがしたかった。にもかかわらず、一度却下すると「わかりました。直してきます」になっちゃう(笑)。
一方で、ジェリー・ヤン(米ヤフー 共同創業者)をはじめ米ヤフーの人たちは、
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