「日本人はクリエーティブでない」はウソ 「スキル」に差はない!では何が足りないのか?

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シリコンバレーでは競合にもオープン!?

伊佐山:シリコンバレーの「ディスカッション」の文化というのは、イノベーションを考えるうえで重要だと思います。前々回のコラム「シリコンバレーでは、何が“特別”なのか?」でも書きましたが、イノベーションは人と人のぶつかりから起きる。そして、シリコンバレーではその質と量が多く、街中のカフェでもそうした“ぶつかり”=ディスカッションが起きていることも大きい。

伊佐山 元
1973年2月、東京都生まれ。97年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に入行し、2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学。2003年より、米大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとして、シリコンバレーで勤務。 2013年夏より、シリコンバレー在住のまま、日本の起業家、海外ベンチャーの日本進出を支援することで、新しいイノベーションのあり方やベンチャー育成の仕組みを提供する組織を創業中。日本が起業大国になることを夢見ている

日本はスタートアップにもかかわらず、自分の持っているアイデアやプラン、技術を出し惜しみするケースが多い。一方、シリコンバレーでは、それこそシェアリングオフィスでソースコードを書いたPCを開けっ放しでお茶にいくこともある(笑)。そもそも「まねされる」「盗まれる」ということを超えていかなければ意味がないと考えているのかもしれません。

日本はイメージだと、単一民族で暗黙知の世界で、お互い信頼しあっていることがベースの社会にも関わらず、スタートアップという観点からすると違う。シリコンバレーでは、お互いの経営戦略も含めて「こういうことを考えている、こういうことをやろうと思っているけど、どう思う?」ということをかなりオープンに話す。ソーシャルゲームに投資していたときも、コンペティターにもかかわらず「次出すゲームのタイトルはこういうこと考えています」などと、こちらが目をそらしたくなるぐらいの話をする。

もちろん、アメリカは訴訟大国だから、当然、訴訟はあります。ただ、そういうセンスでは起業家は動いていません。特に、ネットベンチャーの場合は、スピードとチーム力での勝負なので、アイデアそのものや、製品自体をまねされることは覚悟のうえなのでしょう。

たとえば、シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)は、法人間で締結する業務秘密を第三者に開示しないとする「秘密保持契約(NDA)」を結ばないというのが、シリコンバレーの風土の象徴かもしれません。ただ、NDAを結ばない分、レピュテーション(評判)が重視される社会で、一度、その信頼を失うと、取り返すのが難しい。

松本:日本では起業率が少ないのではないかという問題が言われています。ただ、僕はシリコンバレーのというより、シリコンバレーにいる人が作った「ぶつかる」「オープン」なカルチャーでないかぎり、起業家の数が増えても、支援の仕組みだけが整っても難しいと思う。だからこそ、今回のプロジェクトでのテーマである、日本とシリコンバレーをつなぐことにおいては「ぶつかり合い、しっかり考える」文化を持ち込んでいきたいと思っています。

「日本人はクリエーティブでない」はウソ

松本:こうした「ぶつかり合い、しっかり考える(孫さんの言葉を借りると、脳みそがちぎれるまで考える)」という方法を実践しているのが、孫正義・ソフトバンク社長。末端の人間まで全員の意見を聞きまくって、ディスカッションし、最後の10分まで意思決定しないタイプです。ワンマン社長だと世間からは言われていますが、実際に仕事を一緒にしていた僕からするとワンマンではない。孫さんだから特別という言い方も出来ますが、そうした文化が日本の大企業から個人まで広まることが、これから必要になってくると思います。

伊佐山:僕らは日本とシリコンバレーの違いは、「マインド」だと思っています。「スキル」はもちろん、よく言われる「日本人はクリエーティブではない」というのも正しくない。シリコンバレーにいると、日本人の方がクリエーティブでクレージーな人は多いように見える。ただ、それがベンチャーというコンテクスト(文脈)で生かされていないだけで、それが大きな問題だと思う。

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