シリコンバレーでは競合にもオープン!?
伊佐山:シリコンバレーの「ディスカッション」の文化というのは、イノベーションを考えるうえで重要だと思います。前々回のコラム「シリコンバレーでは、何が“特別”なのか?」でも書きましたが、イノベーションは人と人のぶつかりから起きる。そして、シリコンバレーではその質と量が多く、街中のカフェでもそうした“ぶつかり”=ディスカッションが起きていることも大きい。
日本はスタートアップにもかかわらず、自分の持っているアイデアやプラン、技術を出し惜しみするケースが多い。一方、シリコンバレーでは、それこそシェアリングオフィスでソースコードを書いたPCを開けっ放しでお茶にいくこともある(笑)。そもそも「まねされる」「盗まれる」ということを超えていかなければ意味がないと考えているのかもしれません。
日本はイメージだと、単一民族で暗黙知の世界で、お互い信頼しあっていることがベースの社会にも関わらず、スタートアップという観点からすると違う。シリコンバレーでは、お互いの経営戦略も含めて「こういうことを考えている、こういうことをやろうと思っているけど、どう思う?」ということをかなりオープンに話す。ソーシャルゲームに投資していたときも、コンペティターにもかかわらず「次出すゲームのタイトルはこういうこと考えています」などと、こちらが目をそらしたくなるぐらいの話をする。
もちろん、アメリカは訴訟大国だから、当然、訴訟はあります。ただ、そういうセンスでは起業家は動いていません。特に、ネットベンチャーの場合は、スピードとチーム力での勝負なので、アイデアそのものや、製品自体をまねされることは覚悟のうえなのでしょう。
たとえば、シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)は、法人間で締結する業務秘密を第三者に開示しないとする「秘密保持契約(NDA)」を結ばないというのが、シリコンバレーの風土の象徴かもしれません。ただ、NDAを結ばない分、レピュテーション(評判)が重視される社会で、一度、その信頼を失うと、取り返すのが難しい。
松本:日本では起業率が少ないのではないかという問題が言われています。ただ、僕はシリコンバレーのというより、シリコンバレーにいる人が作った「ぶつかる」「オープン」なカルチャーでないかぎり、起業家の数が増えても、支援の仕組みだけが整っても難しいと思う。だからこそ、今回のプロジェクトでのテーマである、
「日本人はクリエーティブでない」はウソ
松本:こうした「ぶつかり合い、しっかり考える(孫さんの言葉を借りると、
伊佐山:僕らは日本とシリコンバレーの違いは、「マインド」だと思っています。「スキル」はもちろん、よく言われる「日本人はクリエーティブではない」というのも正しくない。シリコンバレーにいると、日本人の方がクリエーティブでクレージーな人は多いように見える。ただ、それがベンチャーというコンテクスト(文脈)で生かされていないだけで、それが大きな問題だと思う。
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