伝説のプログラマーが守り切る誠実な生き方 永遠のパソコン少年が突破した壁の先

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――「変化」を恐れてはいけない。

中島氏:自分が本当にどうしたいのかを考えると、変化も怖くはありません。Microsoft社の日本法人から、アメリカ本社で働くことになった時、ぼくは英語さえ話せませんでした。そして、アメリカに着いてみれば周りは自分よりも優秀なプログラマーだらけ。ひとりで立ち向かうには、Windowsという存在は圧倒的に大きくて……。逆に怖がっている暇はなかったんです。

そうした状況下で確実に成果を残していくのに必要だったのが、小さい頃からやっていたような「工夫」でした。常にどうしたいのかを考え、ベストになる形で仕事をしていく。今に繋がる仕事観もそうして養われていきました。さらに、そうした試行錯誤の繰り返しの中で、今度は自ら会社をやってみたくなり、Microsoftを退職して、UIEvolutionを起業するに至ったんです。2000年、ちょうど40歳の頃でした。

プログラマー中島聡が本を書く意味

「書くこと」は「伝えること」

――その頃に培った仕事観が『あなたの仕事はなぜ終わらないのか』に記されています。

中島氏:おかげさまで10万部を超えるヒット作となり、ブクログによる「第5回ブクログ大賞」では、ビジネス書部門大賞をいただきました。実はその本、もとはといえば、子どもの教育のこともあって日本に戻った家族との連絡手段、「生存確認」として、2004年に始めたブログ(Life is beautiful)がきっかけだったんです。最初は、一人アメリカに残された自分が「今日は何を食べた」とか、そんな他愛もない家族との会話を書いていました。

それが、「日本語とオブジェクト指向」というたまたま書いた記事で、身内だけでなく多くの人が読んでくれるようになったんです。読者もあっという間に1万人を超え、「アルファブロガー」と呼ばれるようになりました。

理数系で国語がてんでさっぱりだった自分が、文章を書くことが好きになったのは、学生時代、『理科系の作文技術』(中公新書)という本を、教授のすすめで手にとってからです。何をどう書けば、ちゃんと伝わるのか。そして、いかに分かりやすく書くか。ブログを書きながら学ぶこともありました。

――「何を、どう」伝えるのか、伝えたいのか。

中島氏:作り手も書き手もそこが曖昧だったりブレていたりしていると、よい本は生まれないですよね。おかげさまで、この本が売れたことで多くの出版社からオファーをいただくようになりましたが、中には「企画はお任せで」という編集者や出版社もいて、そうした自ら企画を考えることを放棄した依頼はすべてお断りしています。

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